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【あいすくりーむ】 アイスクリーム  [英]ice cream [仏]creme glacee

(ア) ルクリおばさんとのお別れディナーのデザート。ペリーヌはお腹が一杯!と断ってました。昔話の王子でも昔はとても食べられない、のにもったいない。「甘いものは別腹」という東洋の格言(?)を知らなかったのでしょうか。

雪や氷を利用した甘い”飲み物”は、古来各地の王侯貴族たちの間で珍重されてきましたが、アイスクリーム直系の祖先は「千一夜物語」にも登場するシャルバート(シャーベットの原型ですね)といわれています。これがイスラム圏の拡大によってイタリアへ、例によってカトリーヌ・メディチの御輿入れ(1533年)によってフランスに伝わりました。材料が果汁から乳製品へと変わっていったのは、次の2つの理由があげられています。
 1.発展の舞台が北に移っていったこと 
 2.冷却技術の発展(天然氷から硝石を用いた吸熱反応へ)
いわゆるアイスクリームが登場するのは18世紀頃からで、同時に長らく王侯貴族の楽しみだったアイスクリームが、この頃ようやく庶民の口に届くようになりました。そしてホームメイドアイスクリームメーカーが発明されたのが1846年、アイスクリームの製造が工業化されたのが1880年頃となります。

【あざみ】 薊  [英]thistle [仏]chardon

(ア,原) アザミ。パリカールの好物。シモンじーさんちの庭(?)にたくさん生えてます。とゆーか何処にでも生えている雑草で、根が深く大きく育ち可憐な花を咲かせるキク科の植物です。私も子供の頃、剣豪気分でばっさばっさと叩っ切って遊んだものです。トゲだらけで(子供にしてみれば)巨大なので、敵にするにはもってこいでした。ところがこのアザミ、全草が食用にそして薬用になります。健胃、慈肝、血の病にもよく高血圧も改善するとか。私は知りませんでしたが、日本でも昔から葉をてんぷらにしたり、茎をキンピラにしたり、根を漬物にしたりして食べているようです。フランス料理に出てくるカルドンもアーティチョークもアザミです。ヨーロッパではある種のアザミは母乳の出をよくするとして珍重されているとか。つまり栄養があるということですよね。てことはあのトゲトゲはそれだけおいしいということを表してもいるのでしょう。
(2005.2.10)

【あし】 葦  [英]reed [仏]roseau

(ア,原) 人知れず水辺でただ風に吹かれて哲学していた葦も、ペリーヌの手に掛かればあ〜ら不思議!一部で有名なスペイン靴に早変わり!!女工さんでなくともそりゃ驚きますよ。
 ”アシ”と呼ばれていたのに縁起が悪いということで”ヨシ”と言い換えられてしまって、それがそのまま学名になってしまったというヤヤコシイ名を持つ葦。全世界の水辺に自生している1〜3mにも成長するイネ科の植物。身近にしかも大量に手に入ることから昔から様々な用途に使用されてきました。軽くて強いことから建築材料に、大きさが揃っていることから細工物にと用途も広いです。有名なところではインカの葦船などがありますね。ただし物の本によると”長い繊維を取り出すには向いていない”そうです。あら、残念。
 葦は、また楽器に多く利用されていることでも知られています。ギリシャのパーンの笛やペルーのケーナなどです。また英語のreedからでも分かるように笛の発振部は葦で出来ているものも多いです。お金はないけれど時間はたっぷりあったペリーヌは、器用に葦笛を作って日曜の午後にでも池の畔で軽やかな曲を吹いて気を紛らわせていたのかも知れませんね。
(2004.6.11)

【あたし】 あたし  [英]I [仏]Je

(ア) ペリーヌの一人称。いえね、DVDの字幕には「わたし」と出ますけど、とうしても私には「あたし」に聞こえてしまうんですよ。両親とも育ちの良いペリーヌが「あたし」というのはチトおかしいと言えばおかしいのですが、アニメ前半のように元気で小しっかりした、このまま成長したら98%肝っ玉母さんになりそうなペリーヌにはぴったりなような気がするんですが。どうでしょうか。だめですか。そうですか(泣)。ちなみに原作では「私」。
(2003.10.11)

【あてね】 アテネ  [希]Athinai

(原) ギリシアの首都。ペリーヌたちの苦しい旅の出発点。事業に失敗しフランスに帰ろうとしていたエドモンでしたが、スエズで債権者たちに追いつかれ路銀を失ってしまったのです。彼は陸路を取ることを決心し、アテネに向かいました。一家はここでしばらく写真屋をして暮らしながら、家馬車やロバのパリカールを入手するなどの準備を進めたようです。だったらもう少し我慢して船賃を貯めた方が良かったのではと悔やまれますね。

【あぶりーんきょうだい】 アヴリーン兄弟  [仏]

(原) ビルフランの商売敵。新興勢力といったところでしょうか?カンブレーに工場があるようです。サン・ピポワ工場にやって来たイギリス人技師たちが予定より早く来たのは、ここでの仕事が早く終わったため。ちなみにここで据え付けていたのはハイドリックマングル(hydraulic mangle?:油圧式搾り機?)で、それを聞いたビルフランは「先を越された」と舌打ちしています。
(2002.9.28)

【あま】 亜麻  [英]flax [仏]lin

(原) 高さ0.6〜1.3mになるアマ科の一年草。5000年前の古代エジプトでミイラを巻いた布として有名です。フラックス、リネンとも言います。その繊維は、通気性と吸湿・放散性に優れ、最も涼感のある素材として好まれています。また水に対する耐久性の高さから帆、漁網、ロープなどに広く利用されてきました。マロクールがあるとされているピカルディ地方でも広く栽培されているようです。ちなみに”亜麻色”とは、この亜麻繊維の色で、”亜麻色の髪”は、早い話が淡い金髪のこと(ちなみに日本人が脱色・染髪した偽金髪は光沢がなさ過ぎるのでイメージが違うと思うなも)。
 《豆知識》 ランジェリーの語源はこの亜麻だとか。肌触りの良い亜麻が肌着によく使用されたことから、らしいです。ふーん。

【あみあん】 アミアン  [仏]Amiens

(ア) マロクール近くの都市。ぼろ布や古鉄の引き取り業者がいるらしく、ルクリおばさんはそこに向かう途中で偶然ペリーヌを助けることになりました。

(原) パリの北約120キロにあるピカルディ地方の中心都市。フランス最大のゴシック様式の荘厳な大聖堂、ノートル=ダム大聖堂があります。SFの父、ジュール・ヴェルヌ臨終の地でもあるそうです。

 ペリーヌの衣装や下着を見て、なさけない、おかしい、恥ずかしいと散々酷評したブルトヌー夫人は、アミアンのいい仕立屋を兄に教えましょうと寛大そうに言いました。もしその言葉をラシェーズ夫人が聞いたら、逆上して卒倒したかも。
(2003.6.7)

【あめや】 あめ屋  [英]sweets seller [仏]vendeur de bonbons?

(ア) シモン荘の住人。敷地内の貨車に住んでいます。どうやら宿代が遅れ気味のようでいつもシモンじいさんに気付かれないようにそろりそろりと登場します。ペリーヌがシモン荘にやってきた時に売れ残りのあめをくれました。

(原) マリが亡くなった直後に外でむせび泣いていたペリーヌに「甘いものはつらいときにはいいんだ」とあめを2本くれました。でも、それは体がつらいときじゃないの?ちなみにこのあめはアルテアエキス入りでのど飴のようなもののようです。

【あらし】 嵐  [英]storm [仏]orage

(ア) マロクールへのつらい旅をひとり続けるペリーヌは突然の激しい嵐に襲われてしまいます。雷鳴に悲鳴をあげ、落雷に肝を潰しながらも森の木場小屋に逃げ込みました。しかし、積み重なった疲労と飢えに加え雨に濡れたまま夜風に吹かれたためひどい風邪をひいてしまいます。それでも旅を続けるペリーヌはとうとう道端に倒れ込んでしまうのでした。

(原) 嵐と落雷に加え、竜巻が雹が、ペリーヌの逃げ込んだ小屋を襲います。しかし、小屋はなんとか持ちこたえたのです。ペリーヌは天候の回復を待って、小屋に一晩泊まりました。原作では病に倒れることはありませんでしたが、彼女は激しい飢えから逃れるすべを持たないのでした。 

【あるぷす】 アルプス  [英]The Alpes [仏]L'Alpes

(ア) ヨーロッパ大陸の南西部に横たわる大山脈。最高峰はモン・ブラン(4807m)(ちなみにこの山の麓にあるのがシャモニー)。フランス語ではアルプAlpesと言うそうです。ビルフランに逢うことを心待ちにするペリーヌに急かされるように、マリは厳しいアルプス越えのルートを辿るのでした。

 言うまでもなくアルプスは名作劇場のふるさとです。『アルプスの少女ハイジ』をはじめ『ペリーヌ物語』『ふしぎな島のフローネ』『わたしのアンネット』『トラップ一家物語』『ロミオの青い空』と数多くの物語に登場します。もしアルプスが無かったら、と考えるだに恐ろしいことです。例えば『アルプスの少女ハイジ』は『ウラルの少女アデライーダ』となってしまい、女子柔道で金メダルを目指すスポ根物となってしまうところでしたね(なんでやねん!)。あなおそろしや。

【あるぷすごえのみち】 アルプス越えの道  [英]route where Perrine went over the Alps [仏]route où Perrine est allé sur les Alpes

(原) ペリーヌたちは、アニメではマリの命を削るシンプロン峠越えをしてフランスを目指しましたが、原作ではどうだったのでしょうか?残念ながら原作では具体的な描写はありません。仕方が無いので、妄想してみましょう。

 そもそも、アルプスを越えたのでしょうか?たかが頑固爺(笑)に会うために、死に掛けてまで急ぐことはありませんよね。
 アルプスを迂回するには
1.地中海沿いにイタリアから南フランスに進んだ。
2.北に迂回し、オーストリア帝国領からドイツ帝国、そしてフランスに進んだ。
 このうち2についてはないんじゃないかと思われます。当時、ドイツとフランスは何度となく大小の戦争を繰り返して、国境線を塗り変え続けていました。その紛争の真っ只中を通過するでしょうか?。それでなくても一見して現地の人とは違うとわかるペリーヌたちが、わざわざ無用なリスクをおかすとも思えません。なにより行程が倍ほどにもなってしまいますしね。
きついイベントであるはずのアルプス越えの記述がないことや、後述のイタリア語の問題からしても1はありそうです。

 家馬車に各国語で書かれた”写真”という文字のかすれ具合をヒントにアルプスを越えた場合を考えてみましょう。家馬車の文字は、ギリシャ語が最も薄れていて、次にドイツ語、イタリア語、そして最もはっきりしているのはフランス語、となっています。つまりそれぞれの言語を話す地域をそれなりの期間かけて通過してきたということです。
 キーはイタリア語です。イタリア語はスイスでも話されていますが、ドイツ語圏やフランス語圏に比べると狭い地域です。つまり、ペリーヌたちはドイツ語地域(おそらくオーストリア帝国領地またはその被支配地)を抜けた後、イタリアを長く旅したのではないでしょうか。写真興行をしなければならないほど長く。

より大きな地図で フランスへ を表示

 アルプス越えのルートとして有名なのは、シンプロン峠のほかにドイツ方面に抜けるブレンナー峠、ナポレオンがイタリアに侵攻したグラン・サン・ベルナール峠などなどと多数ありますが、ここはひとつイタリアからフランスへ直接向かいたかったということにしましょう。早くジジイに会いたいと(笑)。アニメではアルプスに向かったミラノを通過してトリノへ。そこから、ナポレオンが大砲が通れるように整備させたというモン=スニ峠を越えてフランスに入ったということにしましょう♪
(2010.10.28)

【あんちごーね】 アンチゴーネ  [希]Antigone

(原) テーバイの王オイディプスの娘、アンティゴネ。呪われた運命に絶望して己が眼を潰し、狂気に蝕まれつつ彷徨うオイディプスに最後まで付き従い世話をします。オーレリィ(ペリーヌ)に誘導されて(?)歩くビルフランを見かけたベローム嬢が、ペリーヌを”あなたのアンチゴーネ”と表現しました。しかーし、ビルフラン殿。自分をオイディプスに例えられて感動するのは如何なものでしょうか。

【あん・ふぁみーゆ】 アン・ファミーユ  [仏]EN FAMILLE

(原) EN FAMILLE.『ペリーヌ物語』の原作。フランスの小説家エクトル・マロの1893年発表の作品。「家なき子」で名声を博した15年後に記された、小説としてはマロが最後に発表した作品(ただし新訳の解説によれば没後に刊行された作品がひとつあるらしいです)。「EN FAMILLE」(「家庭にて」の意味らしい)は『家なき子』の最後の章のタイトルで、かつこの物語(EN FAMILLE)最後の言葉でもあります。作者は、家庭を奪われた子が再び家庭内に入った後を描こうとしたのだということです。曰く「作中に私は、一つの性格における意志の形成、それの働き、それの果たしうる奇蹟の数々、そういうものを描こうと努めたのである。

【あんりえっと】 アンリエット  [仏]Henriette 

(ア,原) ビルフランの屋敷の女中。オーレリィ(ペリーヌ)が屋敷に住むようになってからは専属の小間使い。ロザリー曰く「あたしも1日で良いからそんな暮らしをしてみたいわ」。召使い頭のセバスチャンに「このお嬢さんは根っからの貧乏育ちではありませんね」というあたり、ルイよりはスキルが上でしょう。
 原作では例によって名前がありません。

【いーりあ】 イーリア  [波斯]Iija 

(ア) ボスニアの若い農夫。産気づいた妻ミレーナペリーヌにまかせて母親を呼びに馬車を飛ばしました。母親より揺りかごが大事。

【いえなきむすめ】 家なき娘  [英]Nobody's Girl [仏]Fille Sans Famille?

(原) 津田 穣訳 岩波文庫に収められている「En famille」の邦訳。現在のところ完訳本はこれだけのようです。この本は長らく入手困難でなかなか読むことのできない幻の本でしたが、世界名作劇場ファンの熱意によって2000年復刊されました。旧かなと難解な旧字てんこ盛りですが、アニメを見たことのある方ならさして苦もなく読み進められるでしょう。そして、アニメがかなり原作に忠実であることに気付かされます。やはり、しっかりした原作があってこその世界名作劇場なのですね。如何にもさうぢや。

 2002年2月、偕成社より待望の新訳完訳版「家なき娘」が出版されました(二宮フサ訳 偕成社文庫)。もちろん現代語で活字も大きくて読みやすく、原書としたフラマリオン社版の挿し絵も挿入されていてとても楽しめます。さらにパリからマロクールへの地図はありますし、巻末には丁寧な訳注まで添えられており、至れり尽くせりと言った感があります。訳者による解説も原作に対する深い愛情がよく感じられて思わず顔がほころびます。『ペリーヌ物語』ファン必読の書と言えるでしょう。

ちなみにこの項はかなりはっきりした誤記です(笑)。何故なら津田 穣訳 岩波文庫版「家なき娘」は【いえなきこ】。二宮フサ訳 偕成社文庫版「家なき娘」が【いえなきむすめ】だからです。うーむ、今まで気が付かなかったとはどういうことじゃ!ああもう。でも面倒だからこのままでいこう(おいおい)。それにしても【いえなきこ】という邦題を思いついた津田さんのセンスはすばらしいですね(って話を逸らすな!)
(2003.4.30)

【いえばしゃ】 家馬車  [英]coach [仏]entraineur

(ア) エドモンの故郷フランスのマロクールまで旅するために一家がギリシャでロバのパリカールと共に入手した馬車(ひょっとしてエドモンのお手製かも)。ペリーヌたちの寝室兼現像暗室。緑色に塗られていて屋根は赤、横には写真機の絵があり、後ろにはバロンがもぐり込める箱(?)がついています。ぼろになりつつもペリーヌたちをパリまで導きました。資金不足からパリでシモン爺さんに引き取られますが、その値は家財いっさい含めてやっと28フランマリ代4回分にもなりません。もし、シモン爺さんがすぐにこれらを売ってしまわずに1年ちょっと保管していたら100倍くらいにはなったかもしれません。少なくとも写真機インド衣装は。

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(写真はいずれもカバヤ食品の ドラマチックコレクションシリーズ世界名作劇場 彩色済 情景フィギュア)

(原) 原作ではさらにぼろぼろの様子で、中を覗いたパリの税関の役人があまりの惨めさに驚いたほどです。屋根は厚紙、壁は枠に青い布を張ったものとあるから荷車の上にテントを張ったようなものですね。これで1000km以上の旅をしようとは!布には各国語で”写真”と書いてありました。ギリシャ語、ドイツ語、イタリア語、そしてフランス語。すなわちそれぞれの地で写真興行をおこなったのでしょう。ぼろのせいか爺さんの見立てはさらに厳しく17フラン50サンチーム

 マリはパリで”ボロの家馬車で1年以上旅をした”といっているので、ギリシャのアテネを発ったのは初夏だったことになります。
(2003.5.31)

    【いぎりすじんのぎし】 イギリス人の技師  [英]engineer of Briton [仏]ingenieur de Britannique

(ア) サン・ピポワ工場にロコモービルを設置する為にイギリスからやってきた二人組の技師。肺炎で入院したベンディットの代わりのモンブルーの通訳があやふやで、その上マロクール工場の技師ファブリが出張中だったために工事が中断していました。
 ちなみにロコモービルはフランス語で”移動式蒸気機関(locomobile)”、要するに機関車のことなんですけど、そこんとこどうよ?>ファブリ君(笑)

(原) 彼らが全くフランス語ができないおかげでオーレリィ(ペリーヌ)はファブリが呼び戻されるまでの3日間、サン・ピポワの宿屋の個室に泊まり、本当のベッドで眠り、御馳走を食べることが出来たのです。機械のラベルからすると、この紳士たちはマンチェスターから来たのかも知れません。
(2002.9.28)

【いけ】 池  [英]pond [仏]etang

(ア) マロクールの村はずれにある池。池の中の小にはオーレリィ(ペリーヌ)が住むことになる狩猟小屋があります。一帯はビルフランの猟場で、狩猟の時期以外にはめったに人が訪れません。というわりにはファブリは散歩兼読書兼睡眠兼水泳に訪れていますが。

(原) マロクール付近には大小の池が散在していますが、これらは泥炭の採掘跡に水が溜まったものだということです。ペリーヌの気に入ったこの池はそれらの池が一つになったもののようです。だとすれば急に深みになっていたり、地盤?が不安定だったりして、危険なのでは?池の回りで結構走り回ったりしてましたが、実は死と隣り合わせだったのですね(まさか?!)。

【いけす】 生け簀  [英]crawl [仏]etang de poissons?

(ア) 釣りは不確実だし、時間がかかります。されど、魚はおいしい。重要な蛋白源を有効に使いたいペリーヌは、好きな時に調理できるように、釣った魚を生け簀に入れるようにしたのでした。あったまいいー。

【いんどいしょう】 インド衣装  [英]Indian clothes [仏]vetements d'Indien

ind2(ア) インドの着物。マリが母親から譲り受けた濃い緑のサリー(?)。エドモンの死後、なんとか写真興行を続けようとするものの、女の写真師というだけで馬鹿にされてお客が集まってきてくれません。ペリーヌの発案でマリはこの衣装を着て写真師として立つことになりました。そんな見せ物みたいなことできません!と渋るマリでしたが、ペリーヌのねらいどおり家馬車は黒山の人だかりとなるのでした。いやしかし、100年前も今も、男ってのは美人に弱い!弱すぎる!13才にしてすでにそれを見抜いてるペリーヌも恐いかも。
 マリの、そしてペリーヌの故郷ベンガル地方は、伝統的なサリーの産地として有名なのだそうです。

 で、当然「サリーの下には何を着てるか」が気になりますが(気になるのはアンタぐらいだよ)、上半身にはへそ上というか胸下というかという丈の袖の短いブラウスのようなものを着ます。チョーリーというのだそうです。これは身体にぴっちりしたものを着るのが良いのだとか。下半身にはペチコートのようなチョニア?(ガーグラ?)という下着を着けます。これの腰紐にサリー布をたくしこんであの優雅なシルエットを作っていくのだそうですよ。
 ちなみにマリさんは巻き付けたサリーを右肩に上げて、生地の端を頭にベールのように掛けています。これは現在一般的なサリーの着付け(右の画像)とは違い、ちょうど逆です。サリーの着付けは地方によって異なります。インド衣装やアクセサリーを購入した際にお世話になったインド雑貨屋SUNDARさんによれば、マリさんのような着方はデカン高原の南のクールク地方(今のカルナータカ州)にあるそうです。なのでマリさんの故郷はこのあたりにあるのかも?
(2004.8.15)

【いんどじん】 インド人  [英]Indian [仏]Indien

(原) インドの人(そりゃあ、まあ、ね)。エドモンの娘を愛するはずだと説得するオーレリィ(ペリーヌ)に対してビルフランが言った返事。ビルフランがエドモンとマリとの結婚を認めなかった主な理由はこれだと思います。同じコーカソイドで同じインド=ヨーロッパ語族でその上同じカトリックなのにそんなに嫌わんでも。まあ、りっぱな19世紀人のビルフランとしては無理ない反応だったのかも知れませんが。
 にしても不思議に思うのは、インドに到達してたった数千年しか経っていないのに肌の色が変わってしまったこと。現地のアジア系とかドラヴィダ系の人たちとの混血?それとも新たに獲得した形質?
(2003.3.10)

【いんどのあくせさりー】 インドのアクセサリー  [英]accessories of India [仏]accessoires de l'Inde

(ア) ボスニアのおっさん達の目を釘付けにしたマリさんのサリー姿。そのエキゾチックな魅力を引き立てていたのが数々のアクセサリーです。美しい漆黒の髪にはチェーンと丸い飾りのついたティカという髪飾り。まるで王妃さまのティアラのよう。首にはチョーカーとでかい菱形のペンダント。さらに大きな木の実?を繋いだネックレスをかけています。耳には房状のイヤリング。腕には小さな腕輪をたくさん着けています。チューリーです。マリのアクセサリーはほとんどが金色のものでしたね。
 一般的に伝統的な社会では女性達が持っている限りのアクセサリーをこれでもかというくらい身につけて日常生活をしていますよね。たぶん「私たちはこんな裕福な生活をしているのよ!」という主張でしょうか。
(2003.11.24)

【うさぎ】 兎  [英]hare [仏]lievre

(ア) バロンの最優先事項。バロンは兎を見かけると普段のずぼらな態度をかなぐり捨てて、まさに猟犬のごとく追いかけずにはいられなくなる体質なのです。ただし悲しいかな、魚と違って捕らえることが出来たためしがありません。(関係ないですが以前ウチで飼ってた猫は兎を捕まえて来ましたよ(自慢))
 ヨーロッパにいる主な兎にはノウサギとアナウサギがあるそうです。バロンに追い回される兎たちは、画面上は単独行動しているようなのでノウサギなのでしょう。(ちなみに家畜の兎はアナウサギを品種改良したものだそうです)

 兎はルクリおばさんの飯の種の一つでもあります。おばさんは地方を回るときに兎の毛皮も集めていましたよね。兎の毛皮は安く入手できるものの耐久性に難があったので、主に子供用として用いられたそうです。(何で安く入手できるかというと、どこにでもいる=兎は繁殖力が旺盛だからです。このことからキリスト教世界では兎は”淫奔”の象徴でもあるのだとか。うーむ、何で飲み屋のおねーちゃんがうさぎさんの扮装するのかと思っていたら、そーゆーことだったのか!(本当かよ)あと、イギリスの昔話には”魔女が野兎に変身していた”というものが結構あるそうな。つまりウサギ=魔女=あやしい、というわけかも(笑)。)
(2010.10.13) 

【うし】 牛  [英]cattle [仏]betail

(ア) 牛の水飲み場でパリカールに水を飲ましていたペリーヌは牛の群れに取り囲まれてしまいました。ペリーヌはパリカールにまたがって(マリ曰く「しがみついて」)難を逃れます。緊張から解放されたペリーヌは笑い転げるのでしたが、マリは身体の変調をおぼえ始めていたのです。

【うまのしっぽのけ】 馬の尻尾の毛  [英]hair of horsetail [仏]cheveux de queue de cheval?

(ア) アウトドア生活を続けるオーレリィ(ペリーヌ)が釣り糸に使用しました。縫い糸ではうまくいかないと思った彼女は、ロザリーに馬の居場所を聞いて、わざわざ引っこ抜いて入手したのです。(縫い糸は伸びるためでしょうか?私は釣りをしたことがないのでわかりません)ちなみにペリーヌの腕前は大したもので、ファブリさんとの晩餐のために吊り上げた魚は40cm以上の大物だったような気がします。

(原) 原作では、工場の前で拾っていました。馬の尻尾の毛が釣り糸によいことは知っていたようですが、縫い糸でもちゃんと釣っています。弘法は筆を選ばず? 

【うまやばん】 厩番  [英]stanbleman [仏]homme d'ecurie

(ア) スイスに入ったペリーヌたちが最初に休んだ宿屋の厩番。よく飼い葉を食べるといってパリカールを誉めます。不思議に思ったペリーヌがわけを尋ねると、険しいシンプロン峠を越えてきた人や馬は疲れ切って食事を取れないことが多いからと言うことでした。そのあと”不思議と食事を取りたくないの”と言うマリの言葉を聞いて、ペリーヌは漠然とした不安を感じるのでした。

【うるむ】 ウルム  [独?]Ulm?

(ア) マルセルの両親が働くエトワールサーカス団の団長。マルセルの面倒を見てくれたお礼に自分たちの芸を披露したいというジャンサンドたちの願いを許し、ペリーヌマリのためだけの公演を開いてくれました。

【えすぱどりーゆ】 エスパドリーユ  [仏]espadrille

esp_b(ア、原) かの有名なペリーヌお手製の靴のモデル。人呼んでスペイン靴。もともとはバスクの船乗りが身近な材料で作った靴で、濡れた甲板や岩場でも滑りにくいとされています。まあ、今ではおしゃれなリゾートサンダルですが。ところでペリーヌはこれをどこで目にしたのでしょう?ペリーヌに食べられる野草を教えたと思われる父エドモンが同じく教えたのでしょうか?一家はへたれ父が資金を使い果たしたためしばらくの間ギリシャのアテネで過ごしています。近くの漁村を営業で回ったこともあったでしょう...。
 「見て!おとうさま。あの漁師さんたち、変わった靴をはいているわ。」
 「...ああ、そうだね。あれはスペイン靴というんだ。いいかいペリーヌ。
  あの靴はねえ、...草で作ってあるんだよ。」
 「まあ!」
原作ではアルプスを越えず、南仏を通ってきたようなので、さらにエスパドリーユを目にする機会が多かったと思われます。
 ところで実は私、このたびエスパドリーユを入手しました!!エッヘン!!(そんなもん、手に入れてどうするんや?おっさん)くわしくは写真をクリック。
(2003.7.25)

【えどもん】 エドモン  [仏]Edmond

(ア) エドモン・パンダボワヌ。ペリーヌの父。ビルフランの一人息子。ビルフランとの諍いからインドに追いやられるが、そこでさらに父の意に添わぬマリとの結婚をしたため勘当同然となり、以降ビルフランの元には音信が届かなくなってしまいます。その後各地を転々とした後にとうとう事業に失敗してしまい、フランスに戻ろうとしますが、直接戻るほどの船賃がなかったため、ギリシャまで船で戻り、そこからは陸路をとることにしたのです。道中、写真屋をしつつ路銀を稼いで旅を続けたのですが、ボスニア・トラブニク近郊のブソバッツァ村にて肺炎のためとうとう亡くなってしまいました。享年34歳。

 ペリーヌの優しいお父さん、のはずですが、回想シーンに登場するその姿は、私にはあやしいペテン師に見えてしかたがありません。しかしそんな事言うと、ペリーヌの顔はエドモンの幼い頃とそっくりらしいですから、ペリーヌはペテン師顔ということになってしまいます。うーむ、困った。

 セバスチャンの言葉をそのまま事実だとすると、エドモンの母つまりビルフランの妻という人はかなり寂しい生涯を送った人だったのかも知れません。父と息子との仲違いの遠因はこのあたりにあったとか(ありがちですが)。

(原) エドモン・ビルフラン・パンダボワヌ。(たぶん)インドでの取引相手のひとつドルサニ・ベルシェ社でその令嬢マリと知り合い結婚します。父と絶縁後、しばらくは引き続き紡績関係の仕事をしていたようですが、ドルサニ・ベルシェ社の倒産後は「イギリス人家庭のためにあらゆる種類の植物や珍奇なもの」を紹介し販売するような事業をしていたようです(これはいわゆる”プラントハンター”ってやつでしょうか?)。写真術やひょっとしたらペリーヌのアウトドア技術もそれ故に培われたのかもしれません。

 アニメでは彼は3月に亡くなるのですが、原作では11月です(パリ到着は同時期)。このことと”家馬車にフランス語で「写真」の文字があった”という記述から想像を膨らませると、原作ではあのマリの命を削るアルプス越えルートは通らなかったのではないかという気がします。

 インドに遣わされた理由については「ひどい贅沢と甚しい散財」とありますが、これとは別に野心満々のタルエルが諍いを煽るような暗躍をしたという噂もあるようです。

 エドモンが病に倒れたとき呼ばれた医者はまじない師のような人だったので、後に母のために呼んだサンドリエ先生が馬車に乗ってくると知ったペリーヌは「本当のお医者様だ。これなら直していただける。」と喜びました。

【えどもんのえ】 エドモンの絵  [英]The picture of Edmond [仏]L'image d'Edmond

(ア) ビルフラン邸の2階、自室の近くに掲げてある大きな肖像画。エドモン20歳のおりに描かれたもので猟犬を従えた彼が静かにこちらを見つめています。多分、いつでもそうしていたのでしょう、ビルフランは語り掛けます。今お前は何処にいるのか。親より先に逝くとは何たる親不孝か。そして、良い娘を遺してくれてありがとう、と。

(原) 絵は登場しませんが、同じポーズの写真がビルフランの書庫の暖炉(?)の上に飾ってあります(ただし、新訳では絵)。オーレリィ(ペリーヌ)がビルフラン邸に住むことになった最初の日、晩餐後本を読みましょうと申し出たペリーヌが案内された書庫で目にします。アニメにも同様の場面がありますが、なんとなくより感動的。

【えどもんのけっこん】 エドモンの結婚  [英]Edmonds' marriage [仏]mariage d'Edmond

(ア、原) ビルフランエドモンと決定的に仲違いした原因。二十歳そこそこの自慢の息子をインドに派遣したら、何を血迷ったか息子は当地で13歳程の小娘に手を出したばかりか結婚してしまった。おーまいがっ!(注1:フランス語)息子よ。そんな神をも恐れぬ結婚は断じて認められぬわ!がっでむ!!(注2:フランス語)ってのが一般的な現在の見方です。

 しかし、エドモンは本当に悪魔の植民地主義的変態小児性愛エロ写真家だったのでしょうか(なんぼなんでも酷すぎ(笑))。そもそも立派な児童書を書こうとしたすでに名声を得ていたマロが、そんな地獄の業火を背負った娘を主人公にするとは思えません。とすると、現在なら非合法としか言えないマリのような少女との結婚は、当時としてはさほど奇異なことではなかったのかもしれません。なによりビルフランは”若すぎる嫁を得た”と言う理由では息子を非難していません。結婚当時のマリさんとほぼ同年齢のペリーヌロザリーは当たり前のように働いていますし(ロザリーについてはベテラン工員扱い)、同じ年頃の同僚も少なからずいるようです。一方、当時働きに出ていた女性労働者が、男性経営者の”お手つき”になることは普通で、結婚する人も多かったそうです(もっとも結婚出来るのは幸運な人でしたが)。ですから年齢だけを根拠に結婚を非難するという風潮はなかったのではないかと思われます。

 では、エドモンの結婚の”何が”ビルフランを激怒させたのでしょうか。考えられるのは
 1.自分の了解無しに
 2.フランス人でない娘と
 3.それどころかヨーロッパ人でさえない、夕食人(笑)のインド人と結婚した!
と言うことでしょう。現在では人種差別はタブーですが、なにしろ当時は欧米列強による植民地獲得競争の真っ直中ですから、人種差別しないことの方が白眼視されたのかも知れません。加えてビルフランはインドのジュートによって財をなした訳なので、例えるとちりめん問屋のぼっちゃんが織り子と、網元のせがれが海女と、旗本の嫡男が下女と勝手に結婚したようなものだったのでしょう(純和風なたとえ)。

 とはいうものの19世紀末のヨーロッパの平均結婚年齢は男性で26才ぐらい、女性で23才ぐらいだったとか。やっぱりちょっと早すぎるかな(笑)。一方インドでは現在でも地方にいけば平均結婚年齢が16才以下だったりするので無問題ですな。なんでもヒンドゥーの伝統的な結婚観では独身は罪悪なのだそうで、早婚は賞賛されることはあっても非難されることはないそうな。
(2002.11.2)

 もう一つの可能性としては、宗教があります。両者ともキリスト教には違いないでしょうが、エドモンは多分カトリック、一方イギリス人のマリさんはおそらく英国国教会だったのではないでしょうか。だった、というのは結婚に際して改宗したかもしれないから。改宗すれば問題なさそうですが、自他共に厳しいビルフランがいかにも噛み付きそうな事柄とは言えそうです。
(2010.10.12)

【えどもんのし】 エドモンの死  [英]Edmonds' death [仏]la mort d'Edmond

(ア) ビルフランエドモンの死の知らせを受けるシーンは『ペリーヌ物語』の名場面のひとつです。はっきり言って、今回私はここで一番感動しました。自分がおっさんになったということでしょうか?むむむ。
 オーレリィ(ペリーヌ)の震える指が、恐れていた”その日”が来てしまったことを告げています。
 フィリップ弁護士
「ビルフラン様、お耐えになって下さい」
 ビルフラン     
「儂は、儂にはそんな力はない!」

ただ一つの願いを打ち砕かれ、魂を抜かれた人のようになってしまうビルフラン。衝撃を受けた祖父の心を思って涙を流すペリーヌ。厳しくいかめしく鉄のように冷たいかとも思われたビルフランの仮面が脆くも砕かれて、一人息子を失った哀れな老人に過ぎなくなってしまうのでした。生気を失い、命まで失うかとも思われたビルフランでしたが、彼の傍らにはただ愛する祖父の回復のみを願って献身するペリーヌが付き添っていたのでした。

【えどもんのそうぎ】 エドモンの葬儀  [英]Edmond's funeral [仏]L'enterrement d'Edmond

(ア、原) ペリーヌは2度、父エドモンの葬儀に出席しました。最初はエドモンが病に倒れた地ボスニアで(アニメでは3月、原作では11月)。ペリーヌとマリだけの寂しい葬式でした(アニメでは+バロンと(多分)宿屋のおやじも参列したでしょう)。
 2度目は晩秋のマロクール村の教会で、土地のお歴々や会社関係者が多数出席した立派な、しかし何処か物寂しい葬儀でした。ペリーヌがそう感じたのは、工場の従業員がほとんど出席していなかったからです。それは何故なのか。その訳をファブリさん(原作ではベローム先生)に聞いた彼女は、同時に母の言葉を思ったのでした。
 このときのペリーヌのもの悲しい表情(or 泣き顔)が、フランソワーズにかつての記憶をまざまざと蘇らせたのです。してみるとエドモン坊ちゃんは寂しがり屋さん(or 泣き虫)だったのでしょうか?
(2002.9.29)

【えとわーるさーかす】 エトワールサーカス  [英]Etoile Circus [仏]Cirque d'Etoile

(ア) マルセルとマルセルのが属するサーカス団。毎年イタリアからフランスにかけての各地で興行しているようです。かつてはパリで興行するときにはシモン荘によく宿をとっていました。その話を聞いていたマルセルはペリーヌにパリの宿としてシモン荘を紹介したのです。最終回では従業員慰問のためにマロクールにも呼ばれたので、マルセルは幸せになったペリーヌと再会することができました。

 エトワールは「星」。そういえば昔、「Etoile de la Seine!」という叫びを聞いていましたっけ。

【えんげいぎょうしゃ】 園芸業者  [英]gardener [仏]jardinier

(ア) パリ近郊(?)で温室で鉢花を栽培しているおじさん。野兎を見てバサーク化したバロンによって温室を破壊され大激怒。哀れな飼い主に損害賠償を要求し、ペリーヌの虎の子5フランをせしめます。が、ちと気が引けたのか、御釈迦になった花を集めてペリーヌに渡すのでした。お金を払ったのだからあんたのものだよ、と。やはり、犬には首輪をつけ、紐でコントロールしないといけませんね、皆さん。特に変な顔の犬は。

しかし、実はペリーヌは後悔していたのでした。「おっさん!花でおなかはふくれへんのとちゃうか?」ところで、このときペリーヌは、大切な飲み水を入れた瓶に花を差して歩いています。おうまいがっ!してみると「水筒代わりの瓶」は2本以上あったのでしょうか。

【えんどうまめばたけのおんなたち】 えんどう豆畑の女たち  [英]women in the pea bean field [仏]femmes dans le champ de haricot nain

(ア) 空腹と疲労と暑さ、そして病気でふらふらのペリーヌはえんどう豆畑で豆摘みをしていた女たちに働かせてくださいと頼みますが、にべもなく断られてしまいます。そしてペリーヌの空腹を見て取ったひとりに、畑のものを盗ったら承知しないよ、と嘲られます。パン屋の件もあったペリーヌは咳き込みながらも激しく抗議します。決して盗みなどしたことはありません!と。しかし、結局、何も得られなかったペリーヌはしばらく歩いた後、意識を失って道端に倒れ込んでしまったのでした。

(原) ここでもやはり泥棒扱いされるのは、ペリーヌの身なりがあまりにもボロだったからでしょうか。ペリーヌは悔し涙を流して立ち去ります。しかし、のちにビルフランが感心したようにペリーヌの誇り高さには驚かされます。行き倒れになりそうになりながらも盗みはもちろん、決して物乞いをしようとしません。なにしろそんなことは思いつきもしないのだから恐れ入ります。もっとも道に落ちている小銭を探そうとはしましたが。

【おーれりぃ】 オーレリィ  [仏]Aurelie

(ア) ようやくマロクールに辿り着いたものの、ビルフランの冷たい容貌と想像を上回る資産とマリの語った事情のために孫だと名乗り出ることをためらったペリーヌが、とりあえずもっとくわしい事情を掴もうと工場で働くために名乗った偽名。フランスではナポレオンの頃から近年まで、歴史上の人物か聖書や聖人の名前しか付けられなかったそうで、「オーレリィ」も11世紀頃の聖人の名前らしいです。元の意味は「金、金色の」。この名を名乗ったペリーヌはトロッコ押しから通訳、社長秘書そして大企業の後継者と電撃的に出世します。ひょっとしてものすごく縁起の良い名前かもしれませんね。

(原) ペリーヌははじめから働きながら情報収集するつもりだったらしく、ロザリーに働くつもりだと答え、オーレリィと名乗っています。しかし何故「オーレリィ」という名を思いついたのでしょう?

 1.当時のフランスで多かった名前
 2.当時のフランスの有名人
 3.インド時代に読んだ小説の登場人物
 4.父エドモンデラでの友人ルセール氏の奥さんか子供
 5.父エドモンの語った昔話の登場人物
 6.父エドモンの語った思い出深い人
 7.インド時代に大事にしていた人形orペットの名

よくわからないのでエドモンがよくお話してくれた昔話の一つ「泥炭坑の魔女」の名前がオーレリィだったことにしましょう。

と、この項を書いた後に、眠夢さんのHP【ペリーヌ物語の部屋】のペリーヌ掲示板(2002/ 1/ 4)にて、モーグリさんによって有力な情報がもたらされました。それは「フランスの守護聖女《アウレリア・ペトロネラ》は、フランス読みでは《オーレリィ・ペリーヌ》となる」ということです。ペリーヌの誕生日の項でも触れられているように、聖女ペトロネラはペリーヌの誕生日の守護聖人である可能性があると同時に、命名の由来である可能性もあります。これが正しければ、そのような縁の深い聖女の名を名乗ることは、大いに考えられることではないでしょうか?しかも、考えようによっては”自分の名”といっても良いくらいの名ですし。

聖女ペトロネラは1世紀のローマの名門貴族の娘でキリスト教徒として殉教しました。のちに使徒ペテロの娘と混同されていろんな挿話が伝えられるようになりました。(異教徒に求婚されたため、塔にこもって「ふさわしい人が現れるまで病を」と神に祈り、病気となりそのまま死んだ?和訳が分からな過ぎ>自分)

あっ、
8.洗礼名
ってのはどうでしょうか。んー、それだと”出任せの名前”ではなくなってしまいますが。

とか言っているうちに、決定版みたいなコンテンツが出来ましたね。それはばろんさんのHP【バロンの気持ち】のトピックスの中の記事《偽名オーレリィ》です。ソースも豊富にリンクされています。とれびやーんです。見ましょう!嗚呼!汝の名は仏蘭西!
(2006.1.3)

【おおかみ】 狼  [英]wolf [仏]loup

(ア) ペリーヌ母娘は家馬車での旅の途中のクロアチアやスイスの山中で狼に脅かされました。特にスイスでは狼の群に追いかけられ、パニくったパリカールが暴走したため、当初ジュネーブに出る予定だったのが、(多分ジュラ県のどこかの)ミロード村に着いてしまったのです。とうとう希望の地フランスに足を踏み入れたと思う束の間、マリが病に倒れてしまうのでした。

 ヨーロッパの狼はヨーロッパオオカミ(まんま)とかハイイロオオカミとか呼ばれる種類で、肩高80cm、体重80kgを超えることもあるという大型で名前の通り灰色の狼です。もっとも19世紀の西ヨーロッパではほぼ絶滅状態でした。意外なことに野生の狼はほとんど人を襲うことはなく、逆に野犬と混血したものは人を襲うとされています(『ジェボーダンの獣』の正体はそういう犬ではないかという説があります)。まあ、狼が人を襲ったのは、戦乱が打ち続いて、野山に死体がゴロゴロしていた時代(中世ヨーロッパのような)のことと言えるでしょう。
 DVD見直して思ったのですが、クロアチアに入った村でヤギ乳をわけてもらった農家のおばさんが言っていた「森に出るタチの悪い狼」というのは、ひょっとして「タチの悪いオーストリア兵」のことなのではないでしょうか?まあ、森には本物の狼もいたようですけど。
(2003.8.24)

【おぬー】 オヌー  [仏]Oneux

(ア) 最初にオーレリィ(ペリーヌ)が配属された部署の職長さん。工場に入り込んで騒動をおこしたバロンを摘み出し、今度入り込んだら、とっつかまえて皮剥いで、「スリッパ3足分作ってやるからな!」という名言を吐きました。しかし、なかなか気のいいおじいさんです。

(原) 十年ほど前に工場で労災にあい義足をつけています。通称「木の足爺さん」。女工たちを怒鳴りつけているのは集中力を絶えさせないためだとか。やはり気のいいおじいさんです。

【おめーる】 オメール  [仏]Omer

(原) フランソワーズの弟。ビルフランに任されてダンスホールを経営しています。割と繁盛しているらしく、マロクールだけではなくフレクセールにもホールを構えているようです。それで忙しいせいかどうか、奥さんは飲んだくれのようですが(笑)。
 アニメでは、最初にビルフランがフランソワーズの元へ立ち寄ったのは、ファブリ宛の書類を託けるためでしたが、原作ではオメールへの苦情(というか命令)を伝言するため。
(2010.10.12)

【おやしき】 お屋敷  [英]The residence [仏]La residence

(ア、原) フランス工業界の大立て者ビルフラン・パンダボワヌ氏の屋敷。マロクール郊外の丘の上に建ち、後に市民公園として開放されるほど広大な庭を有しています。その金塗りの荘厳な鉄格子門は、さる王族が手が出なかったものを氏がポンと購入してしまったという一級の工芸品。この4階建ての屋敷は、もともとビルフランが息子エドモンの婚姻を見越して建てたものだったのですが、息子と仲違いをしてしまった氏は、十数人の召使いと共に一人で住んでいます。自家発電設備と暖房用ボイラー、温室を備えており、ロザリーによれば邸内は各所に金をふんだんに使っているそうです。

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yuri    yuri

    【がくしゃいぬ】 学者犬  [英]show dog [仏]chien d'exposition

(原) 原作中には学者犬とか学者猿とかいう表現が出てきますが、当時そういう見せ物が流行ったのでしょうか?それともフランス語の言い回し?たぶん「馬子にも衣装」の逆バージョンで「ふさわしくない者がもっともらしい格好をしている」といったような意味だと思いますが、如何?

見せ物の犬だの猿だのと言えば、マロの代表作「家なき子」を連想しますね。

新訳ではストレートに「見せ物の犬」(笑)。ただでさえ口の悪いブルトヌー夫人にこんなこと言われた日にゃ、仏のペリーヌ様も憤怒相になりますわなぁ。    

【かけいず】 家系図  [英]genealogy [仏]genealogie

(ア、原) アニメと原作中に登場する主要な3つの家族の家系図(?)をまとめてみました。ただし、アニメとも原作とも違います(笑)。まあ、e_nono版とでも言いましょうか(開き直り)。主な相違は...
・カジミールの存在とテオドールの母親 まあこれは、原作に沿ったと言うことで。
・ビルフランの妹 そんなのいるとは何処にも書いてありません。アニメのナレーションの揚げ足を取ってみました(笑)
・マリの名前と両親 アニメと原作のチャンポンです。
・フランソワーズの子供たち セザールの妻がゼノビでないのはセザールが可哀想だから(笑)。ゼノビがフランソワーズの子供ではないのは、ロザリーをいじめているので。

 ヒデさんから「原作ではロザリーのおかあさんがエドモンの乳兄弟と明記されてます」との指摘をうけ、図を修正しました。だぁって〜、アニメではフランソワーズとセザールは実の親子のようだったんだもーん。
(2003.6.21)

【かじみーる】 カジミール  [仏]Casimir

(原) カジミール・プルトヌー。ビルフランの姉の息子。父はブーローニュの貿易商人。理工科学校卒(?)の技師の卵。25,6歳。(多分)既に嫁いだ姉が二人います。数学が得意なようですが、テオドールと比べて実務経験には乏しいです。ドイツ語は学校で学びましたが、英語はさっぱり。横柄で人を嘲るところがあり、オーレリィ(ペリーヌ)に”いやな奴”と言われました。エドモンが消息不明になって以来、ビルフランの後継者を巡って家族ぐるみでテオドールと鍔迫り合いしています。
(2004.2.29)

【がすとん】 ガストン  [仏]Gaston

(ア) シモン荘の住人。シモン爺さんの集めた古靴を直して商売しているようです。マリの養生のためにシモン荘に部屋を借りたペリーヌの隣人。おいしいスープを作ることが趣味ですが、誰にも食べさせたことがない、という小咄「猿の手」のような人。しかし、侯爵夫人の計略によって渋々マリにスープを分け与える羽目になってしまいました。ペリーヌから彼のスープを飲んだという話を聞いたシモン爺さんは結構驚いていましたね。シモン爺さんとの「ケチ論議」はなかなか傑作。

(原) 通称「黙り屋」さん。背が高くて、しかし腰がすごく曲がっています。本名は不明。セリフはペリーヌが旅立った後の一言「ふびんな子ぢや!」ただひとつだけです。おまけにファブリさんがオーレリィの身元調査に訪れたときには”疲労と衰弱と貧しさのために”すでに亡くなっていました。「不憫な親爺ぢや!」

新訳では通称「鯉おやじ(ラ・カルプ)」となっています。魚のように黙って黙々と仕事をしているからだとか。
(2003.5.25)

【かば】 樺  [英]birch [仏]bouleau

(原) 突然の嵐を森の中で見つけた小屋に逃れたペリーヌが、空腹をなだめるためにものは試しと口にしました。いくら樹皮で飲料水を作る地方を知っているといったってそのままかじっちゃいけませんや、娘さん。結局、くちゃくちゃやって吐き出してしまいました。葉の方はまだ飲み込めた、ってオイ(笑)火をおこせたらチャップリンみたいに靴を煮て食べちゃったかも。

実際に樺の幹に傷をつけ、にじみ出た樹液を飲むことが出来るそうです。甘くておいしいようです。キシリトール?

【かるぴす】 カルピス  [日]CALPIS

(ア) ミルキーはママの味ですが、カルピスは初恋の味です。そんなマセたもの幼児に飲ましても良いのでしょうか?>初恋だから可。濃縮乳酸菌飲料でシェア九割の飲料メーカー。名劇初期のスポンサーで『ペリーヌ物語』をはじめ傑作揃いの作品を後援してくれました(赤毛のアンまで)。ちなみに”世界名作劇場”となったのはカルピスがスポンサーを降りた後で、『ペリーヌ物語』は”カルピスファミリー劇場”。

カルピスウォーターが発売されたとき「それは反則!」と思った人も、もう中年(溜息)。

カルピス株式会社のHPによれば『「カルピス」という名前は、カルシウムの「カル」にサンスクリット語の<最上の味>を意味するサルピスとを合わせた言葉』とのことです。しかもモンゴルの発酵酸乳をヒントにして作られたのだとか。うーん、知らなかった。

【かれーかいどう】 カレー街道  [英]route of Calais [仏]la route de Calaisere

(ア、原) ペリーヌが、マロクールまで辿ろうとしていた道。アミアンまではこの道を、アミアンからはブーローニュ街道を進むつもりでした。マロクールまでの全工程は約150km!けれどもペリーヌは、疲労と空腹で(アニメではさらに風邪をこじらせて)最初の30km程の地点で倒れてしまったのでした。
 カレー街道は、昔、郵便馬車が通っていた道筋で、サン=ドニから、エクアン、ルサルジュ、シャンティイ、クレイユ、クレルモン、ブルタイユ、アミアンと続いています。
(2010.10.14)


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【かんごふ】 看護婦  [英]nurse [仏]Infirmiere

(ア) ペリーヌルクリおばさんに助けられて入院した病院の看護婦。彼女の話から、ペリーヌが1日以上意識がなかったことがわかります。しかし、ペリーヌさん。病院に犬を呼び込んだり、病室で大声を出してはいけませんよ。ところで、患者服(?)のペリーヌもかわいい。

【きなぶどうしゅ】 キナ葡萄酒  [英]cinchona wine [仏]vin de quinquina

dubonnet(ア,原) 幾那葡萄酒。サンドリエ先生の最初の処方にある薬。これだけで4フランもします。最初ペリーヌは持参したお金が足らず途方に暮れていたましたが、薬屋のおやじが”キナ葡萄酒は後でも良いでしょう”と助け船(?)を出してくれました。
 キナ(幾那,吉那)は南米原産のキナノキの樹皮。マラリアの特効薬であるキニーネの原料。健胃剤,止腐剤,強壮薬,解熱薬として使われたようです。ということならキナ葡萄酒はフランス風養命酒といったところですか(ちなみに養命酒には1973年までキナが配合されていたそうです)。キナの入った物は、苦みがあるようです。トニック・ウオーターにも入っているとか。もちろん、沖縄歌謡とは無関係。
 デュボネ:dubonnet というアペリティフがあるそうです。フランスの食前酒です。赤ワインにキナの樹皮を漬け込んで作るそうで、19世紀にデュボネさんが発明(?)したのだとか。サンドリエ先生が処方したのは時代的にこれか、これに似たものなのかもしれませんね。デュボネは大きな酒屋とか通販でも買えます。飲んでみようかなあ....
 ...と言う間に、飲んでみました(笑)。とにかく甘んまーい!で、後味にちょっぴり苦みが残ります。赤いニャンコのラベルの赤玉スイートワインといったところでしょうか。アルコールは14度。もとがワインだからそんなもんですか。なんとも甘いので炭酸水で薄めて飲んだ方が(私には)飲みやすかったです。「これをマリさんに飲ませるためにペリーヌはパリカールを...」とすすってみるのもファンならば一興でしょう。
(2004.10.23)

【きまぐればろん】 気まぐれバロン  [英]Capricious Baron? [仏]Baron capricieux?

(ア) 『ペリーヌ物語』のエンディング曲。画面をバロンが駆け回るなかで流れます。口笛吹いたらすぐに私のそばに来てね、とペリーヌは歌っていますが、はて、ペリーヌは口笛が吹けたかな?

【きゃらめる】 キャラメル  [英]caramel [仏]caramel

(ア,原) 炉で乾燥させたは赤っぽくなり、キャラメルのような匂いがするようになるらしいです。秘書にしたオーレリィ(ペリーヌ)の観察眼を試すためにビルフランが用いていました。アニメでは、若すぎる秘書の採用に不満なテオドールたちを納得させるために、ペリーヌの能力を実演して見せた感が強いです。

【きゃらこ】 キャラコ  [英]calico [仏]calicot

(ア,原) 着古したシミーズを新調するためにペリーヌが購入した生地。もちろん彼女は安いほうを買いました。綿織物の一種で、その昔、インドのカルカッタから盛んに輸出されたのでその名がつきました。

【ぎょーむ】 ギョーム  [仏]Guillaume

(ア) ビルフランの御者。物語にはもう一人、フェリックスというビルフランの御者が登場しますが、この二人の使い分けは社用と私用というようなものかと想像してます。ギョームは酒の失敗が多かったのですが、タルエルの取りなしによってクビにならずにすんでいたようです。見返りにビルフランの身辺のことをタルエルに報告していました。タルエルの側につくことをオーレリィ(ペリーヌ)に奨めたりもしています(もちろん、きっぱりと断られていますが)。しかしある時、仕事中に酒を飲んで予定に遅れ、しかも反省した様子もない態度に、ビルフランの堪忍袋の緒が切れて即座にクビになってしまいました(ああ、苦節15年の御奉公が一瞬でぱあ。やはり”飲んだら乗るな”ってか?)。
 ギョームの解雇によって、ペリーヌは初めてビルフランの御者として手綱を取るチャンスを得ました。と同時に、自分を裏切った者を決して許さないというビルフランの厳しい態度に、ペリーヌは孫だと申し出る勇気をますます失うのでした。

ギョームの代わりにペリーヌが御者をしてきたことに対するタルエル氏のコメント「いろいろなことができる娘ですなあ」。いやホントに。

(原) 切れる男だったが酒で馬鹿になってしまい御者ぐらいしか出来ぬ。それも多少のことは大目に見たとしてだ、とはビルフランの評。酒は飲んでも飲まれるな、ということですね。馬車の扱いは乱暴で、ファブリ曰く「あいつが御主人を十ぺんもひっくり返さずにすんだのはのは奇蹟だ」。彼はタルエルのスパイとして嫌われていたのです。
(2002.11.30)

【ぎよえん】 ギヨ園  [仏]Champ Guillot

(原) シモン荘の名。意味はフランス語を知らないのでわかりません。そもそも原作ではシモン爺さんはシモン爺さんでなく、「塩(旧字)爺」という通称しか出てきません。だからギヨ園というのも、例えば「おんぼろ荘」ぐらいの意味かも。
 「ギヨ」というのは「ギョーム」の愛称らしいので、もしかしたら塩爺さんの本名は「ギョーム」というのかも知れませんね。また、直訳すると”ギロチン場”(笑)。処刑場の跡地なんですかねえ?
(2002.9.27)

【くつした】 靴下  [英]stocking [仏]bas

(ア) アニメではペリーヌビルフランに秘書に取り立てられるまで靴下を履いていませんでした(ただし原作ではスペイン靴を履くシーンで”靴下の上にリボンを巻いた”とあるので靴下を履いていたようです。靴下が大量生産されるようになったのは1860年代以降のようなので、時代設定の違いを考えれば妥当なところでしょうか)。靴下を履かずに革靴(?)で1000q以上の長旅をするなんて!想像するだに悲惨なことになりそうですが、しかし靴のほうは壊れても足の裏は大丈夫でした。おそらく”お前を見守る星が強く輝く”ような鋼の足の裏をしていたのでしょう。(てゆーか昔のフツーの人はみんなそうだったのでしょうか?)
 逆にビルフラン・パンダボワヌ社の秘書となってはじめて靴下を履くことが必要とされた、という見方もできます。つまり当時、靴下にはそれだけのステータスがあったということになりますね。

(原) 原著でペリーヌがラシェーズ夫人の店で買ったのはbas、すなわちストッキングです(たぶん黒の)。ストッキングと言えばジュディの大喜びぶりが思い浮かびますね(私のあしながおじさん「第7話 金貨の上手な使い道」)。このころ流行していたのは絹のストッキング(それも日本産の絹)でしたが、その後1938年に”奇蹟の繊維”ナイロンが発明されるとこれが爆発的にヒット。たちまち品薄となりナイロンのストッキングは最高級品に。逆に絹のストッキングは売れなくなってしまったのでした(現在からするとまるで逆ですけど)。これによって当時日本の輸出産業の花形であった絹産業は大打撃を受け、のちの侵略戦争の遠因のひとつとなったと言う説もあります。たかがストッキング、されどストッキングですね。
(2003.8.6)

【ぐりごりっち】 グリゴリッチ  [波斯]Grigoric?

(ア) ペリーヌ写真を撮らせてくれたボスニアの比較的裕福な農夫。一族全員で写真におさまろうとしたのはいいのですが、愛馬を写すことにこだわったためなかなか位置が決まらず、他の家族も勝手なことをして埒が明かないのでとうとうマリに叱られてしまった人。なかなか微笑ましいエピソードですね。ペリーヌの口上にも「一生の記念になる御写真はいかがですか」とあるように、当時の写真撮影は一族を集めたくなるような一大イベントだったのでしょう。

【けいかん】 警官  [英]policeman [仏]policier

(ア,原) 『ペリーヌ物語』では警官は疫病神です。問答無用で(誘拐容疑で)連行するは、商売の邪魔をするわ、馬市では急かされ、がめついマルガレータには警官を呼ぶよと脅され、原作ではえんどう豆畑の女たちに警官が来た!と囃し立てられてました。警官は貧乏人の敵ということでしょうか。

【げしゅくやのおんなしゅじん】 下宿屋の女主人  [英]landlady [仏]femme de proprietaire

(ア) ロザリーの父セザールが紹介してくれた一番安い女工下宿のおかみさん。犬が大嫌い。下宿代が安いことに自信を持っています。バロンを繋いでおくのがしのびないオーレリィ(ペリーヌ)は、同じ下宿の下宿人たちに嫌みを言われたこともあって散歩に出かけます。慣れない仕事で思っていた以上に疲れていたペリーヌは、村外れのの縁で眠り込んでしまいます。そして翌朝”狩猟の小屋”を見つけることになるのです。

ペリーヌは結局ここには一泊もしなかったのですが、おかみは契約を楯に、前払いした下宿代を返してくれませんでした。でも、きっと半年後には後悔したことでしょう。あの時のみすぼらしい小娘に洗脳されてしまったビルフランが、マロクール再開発計画をブチ上げ、独身者用工員寮を建設すると宣言したのですから。消費者の苦情には素直に耳を傾けた方がよいという教訓?

【げしゅくやのしゅじん】 下宿屋の主人  [英]landlord [仏]logeur

(ア) ビルフラン様の秘書さんが下宿するなら、ということでロザリーの父セザールに再び紹介してもらった家具付き下宿のおじさん。犬好きで、オーレリィ(ペリーヌ)が店子になって以降は彼曰く”下宿人はすべてバロンが好き”ということになります。その割には最初犬がいるならと下宿代を上げようとしてましたが。

【けっこんしょうめいしょ】 結婚証明書  [英]marriage certificate [仏]certificat de mariage

(ア) エドモンマリとの結婚を証明する書類。マリのハンドバックの中に大切にしまわれていました。マリがみまかる間際に、お前の出生を証明する物となるから大切にしなさいと言い残しました。結局、出番は回ってきませんでしたが、ビルフランが亡くなって遺産相続の法廷闘争なんかが始まった暁には、重要になることでしょう。

(原) 上に加えて臨終のマリは(葬儀や埋葬に必要だから)要求する人に見せなさい、と言っています。実に現実的。しかし、結果的にはこれによってオーレリィペリーヌの証となったようなものです。

【こいし】 小石  [英]pebble [仏]caillou

(原) マロクールへの道を一人辿るペリーヌ。ひどい渇きのために顎がこわばって、舌の感覚も無くなり、呼吸もしにくくなってしまいました。ペリーヌは小石をいくつか口に含むことで、なんとか事なきを得ました。のですか、私はこんな状況に陥ったことがないので、いまいち実感が湧きません。

そういえば最近1ヶ月だか2ヶ月漂流した漁師さんが「衰弱してくると筋肉がこわばって口が開けにくくなった。そこで空けたままにしていると口の中がからからに乾いて今度は閉じにくくなった。だから漂流中の最後は口を開けたり閉じたりしていた。」というコメントをしていました。ペリーヌもこういう状況に陥り掛けていたのかも知れませんね。

【こうしゃくふじん】 侯爵夫人  [仏]Marquise

(ア) シモン荘の住人。侯爵夫人は通称で本名はカロリーヌ。街角で自作の歌を歌い、その歌集を売ることを生業としています。マリのためシモン荘に住むことにしたペリーヌの隣人。昔、病気になったときにガストンのスープを分けてもらって快方したことがあったそうです。そこで一計を案じてスープをペリーヌに分けさせるように仕向けてくれました。マリの葬儀後、一人でマロクールへ旅立つペリーヌに自分の帽子を贈りました。

(原) 本名は不明。帽子ではなくフランス国旗の三色リボンの飾りのついた頭巾(?新訳ではボンネット)を被っています。マリが駅に向かおうとして倒れた後、黙り屋さんのスープを与えるが逆効果で、マリは嘔吐したあと長い人事不省に陥ってしまいました。

聞くところによるとこの時代、街角で自作の政治風刺や卑猥な歌を歌って楽譜を売ったりおひねりを貰ったりする人が多数いたそうです。まあ、今でもいますけどね。

侯爵夫人は話を聞いた後、まだ墓前を去りがたいペリーヌに、遺言には従わなくてはなりませんよと旅立つことを促します。引き留めても良さそうなものですが、肉親の死のような大きなストレスを乗り越えるには何でも良いから没頭できることをすぐした方がよいと、長い経験の中で感じていたからなのかも知れません。安易な安息を与えることで、ペリーヌまでもが病に倒れることを恐れたのかも。後にエドモンの死を知って意気消沈したビルフランがすぐさま仕事に出ることを心配するペリーヌに、その方がかえって良いとセバスチャンが言ったのと同じ心持ちでしょう。

【ごえいたいちょう】 護衛隊長  [英]guard captain [仏]capitaine de garde

(ア) ペリーヌバロンに与えた肩書き。実際、心細かったに違いありません(少なくともマリは)。しかし、職務怠慢のため解任されてしまいます。後任はマルセルですが、サーカス団に追いついたミラノで任務を離れます。その後のことを考えると護衛隊長がいる間の旅は安泰だったということになりますね。パリカールを3代目に任命すれば良かったかも?

【こかいん】 コカイン  [英]cocaine [仏]cocaine

(原) ビルフランの眼の手術に局部麻酔としてブルム医師が使用しました。御存じの通りの麻薬で副作用が大きいため、現在ではごく限られた用途の局部麻酔薬としてしか用いられません。当時は眼科や歯科、咽頭などによく用いられたようです。局部麻酔薬としてコカインが初めて使用されたのは1884年、一般化したのはその数年後です。マロが原作を発表したのが1893年なので、彼は同時代の物語として描いたことになります。つまりアニメの設定の方が十数年古いことになりますね。

コカインは、南米の人たちが疲労回復などに噛んでいた嗜好品コカの葉の主成分で、1855年ドイツで分離されました。当時様々な飲料に添加され「ファイトぉ!一発!!」てな感じで好評を博したようです。かのシャーロック・ホームズ氏も愛好者ですね。1886年発売のコカ・コーラにコカインが含まれていたのは有名な話です(添加は1905年まで)。ちなみにコカ・コーラは当時人気のコカのエキスとコラの実のエキス,つまりコカイン+カフェイン(いずれも興奮剤)配合だったので「《超》スカッとさわやか」だったはずです。

麻薬としてのコカインは強力な興奮剤で、何も食べなくても元気に働けるほどの多幸感が得られます(当然強力な反動あり)。体内で速やかに分解されるため、効果は持続しません。同じ理由で身体的な依存は生じませんが、心理的な依存がきわめて強く、多くのユーザーは煉獄にまっしぐらとなります。

【ここ】 ココ  [仏]Coco?

(ア,原) ビルフランの馬車を牽く馬。年寄りのおとなしい馬。原作ではギョームに代わってオーレリィ(ペリーヌ)が初めて馬車を駆った時「あまり急かさないでくれ」と言っているあたり、どうやら氏も気に入っているようです。そのわりには、アニメでギョームをクビにしたとき、激高して杖でしばいていましたが。
 Coco”は、”かわいい男の子”ぐらいの意味らしいので、馬の名前ではない可能性もあります。と同時に、つまりココは牡なのですね。
(2002.9.27)

【こじか】 子鹿  [英]fawn [仏]faon

(ア) ミラノ近くのある湖畔に野宿した夜、物音に目覚めたマルセルバロンと挟み撃ちにして捕まえました。たぶんマルセルは本能的に捕まえようとしたのでしょうが、マリに”あなたもお母さんに会いたいんでしょう?”と諭され放してあげました。個人的にはあざとすぎてあまり好きでないエピソードです。

【ごはん】 御飯  [英]boiled rice [仏]riz bouilli

(ア,原) 原作では塩爺さんの敷地に家馬車を入れたペリーヌが炊いて食べました。作者はインドから来た母娘ということで米を食べさせたのか、当時の風俗では米=貧民の食事だったのかよくわかりません。アニメでのふたりの食事はパンとかスープが多かったような気がしますが、鍋でお粥を炊いて食べることもありました。しかしペリーヌがお碗2杯の御飯をフォークでもくもく食べているのは違和感炸裂!でも、味の付いてない御飯だけを食べるのは、ペリーヌのような心配事を抱えていなくても喉を通りにくいでしょうね。パリのペリーヌに桃屋の「江戸むらさき」を届けたい。おすすめは「花椒のり」。食べたときの舌のしびれが最高!...って一体何の話?

よく考えたらリゾットでしょうか。比較的お米をよく食べるというイタリアを通ってきたことでもありますし。しかし、粥状でない粒の潰れていないごはんで、山盛りに盛れるようなので、いわゆる”御飯”ですね、やはり。

まあ、こういうことはほしのん亭のペリーヌの食卓で網羅されていますから、こちらでどうぞ。

【ごるじもふはくしゃく】 ゴルジモフ伯爵  [独]Graf von Gordimov?

croa(ア) ペリーヌに襲いかかったので(誤解)バロンにお尻を噛まれたクロアチアの伯爵。もともとこの地の有力者で、フランスに学んだクロアチア独立運動のリーダーのひとり。オーストリアの兵士に追われていたのをペリーヌの機転に助けらました。ちなみにゴルジモフ家の紋章は金十字柄の赤い楯の上に金の王冠。もしこれが創作されたものならば、サッカーのユニホームなどに見られる赤白チェックの楯にしてもおもしろかったかもしれません。これは「シャホヴニツァ」と呼ばれ、中世のクロアチア王国以来使われてきた民族の象徴らしいですから。(右は現在のクロアチア国旗)
(2002.9.7)

【こんやくしゃのおとこ】 婚約者の男  [英]fiance's man [仏]homme des fiance

(ア) バロンの活躍でなけなしの5フランを失ってしまったペリーヌ。とりあえず夕食を我慢することにし、意気消沈して街の噴水の縁に腰掛けていました。すると、婚約者の元を訪れるという若い男が馬車で通り掛かり、ペリーヌが持っていた花束を40サンチームで買ってくれたのです。神様が憐れんでお恵み下さったのだわとペリーヌは感激するのでした。

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