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yuri    yuri

【まり】 マリ  [仏]Marie

(ア) 結婚前はマリ・スティーブンソン。エドモンの妻で、優しく賢く美しいペリーヌの母。ビルフランに言わせれば”大事な一人息子を誑かして放そうとしないあさましい女”。インド人とイギリス人のハーフ。アニメは見知らぬ異国で夫を亡くすという途方に暮れるような状況で始まったので、彼女は気が弱く優柔不断で、少し愚かなところがあるようにも見えるかもしれません。しかし、物語が進むにつれて、マリが賢く、心の広い、他人の良い面を見ることのできる人だということがわかってきます(もっと話が進むと天に召されてしまいますが。ちなみに、8月15日は”聖母マリア被昇天”の記念日です)。結局ペリーヌに幸せをもたらすことになるマリの”情けは人の為ならず”的信条は、普通なかなか実践できないものです。やはり神に愛された人は違うと言うべきでしょうか。娘のしあわせを得るためには我が身をいとわぬ勇気ある、そして誇り高いマリは、実にペリーヌにふさわしい母親ですね。

 インドで幸せに暮らしていた頃は、よくエドモンとダンスをしていたそうです。また、縫い物も得意で、娘のベストを作りました。マリの故郷(?)であるベンガル地方(今のバングラデシュ)では”カンタ”という刺繍文化があります。当地ではこれが出来ることはその女性の聡明さと家の裕福をあらわすとされるとか。両方を兼ね備えていたマリさんは当然刺繍の腕も確かだったでしょうから、ベストに限らずいろんなものを縫ったことでしょう。また、多くの言語にも秀でており、英語とフランス語と(地元の)ベンガル語に加えて、少なくともギリシャ語とドイツ語、イタリア語の計6ヶ国語が話せます(はずです)。

 何かにつけ人に心付けを渡すようにとペリーヌに言うマリは、きっといろいろな辛い体験をくぐり抜けて来たのでしょう(後のマルガレータ事件のような)。裕福な家庭(たぶん)で育った彼女が、若くして結婚し幸せな家庭を持ったのも束の間、夫が破産した挙げ句に亡くなり、見知らぬ異国を旅して、決して自分を歓迎しない義父のもとに行かなければならないともなれば体も弱くなると言うものです。もともと体が丈夫な方ではありませんでしたが、過酷な旅の疲労と心労によって心臓を病んでしまいます。しかし、旦那はもっと弱かった。破産はするわ、早死にするわで、期待はずれもいいとこです。ビルフランの思いとは逆にたぶらかされたのはまったくマリの方でしょう。当時13,4歳ですからねぇ。ペリーヌには教訓にして欲しいものです。しかし、原作ビルフラン氏は不吉な予言をしています”印度の娘は早熟ぢゃ”。

(原) 結婚前はマリ・ドルサニ。インド人。ドルサニ家は東インドのダッカの裕福なバラモンでしたが、マリ誕生の前後にカトリックに入信したため、一転してアウトカーストの身分に。その後、フランス人のベルシェ氏と共同で紡績会社「ドルサニ・ベルシェ社」を興し、成功を収めました。エドモンがマリと知り合ったのはベルシェ夫人の屋敷でのことのようです。その後二人は結婚、4年あまりをドルサニ家で過ごしました。がその後、会社は倒産、マリの両親は相次いでこの世を去ってしまいました。マリは新事業を手がけるエドモン、3歳になるペリーヌと共にチベット国境に近い町デラにおもむきます。一家はここで平穏な月日を少なくとも5年以上は過ごしたのでした。死後は天国でミルク入りチョコレート(ミルクココア)を作りつつ、娘が来るのを待っているようです。

 マリは27,8歳にもならないのに壊血病で衰弱し、愛娘ペリーヌの行く末を案じつつ6月のパリで死亡してしまいます。壊血病はビタミンCの欠乏により全身の血管がぼろぼろになって各所から出血する病気。やはり人間、野菜を取らなくちゃいけないのです。

 新訳ではマリー・ドレッサニ。マリってのはインドの変わった名前かと思ったら、マリー=メアリー=マリアで、ばりばりクリスチャンな名前だったのですね。

 インドには”殉死”の風習がありました。いまでもたまにニュースがあったりします。つまり、寡婦は夫に殉ずることをよしとする悪しき風潮で、時には強要されることもあった(ある?)とか。もちろんマリさんはキリスト者で、夫を亡くしたのはインドから遠い地でのことでしたが、内なるプレッシャーが知らずあったのかも知れません。とすれば、それが彼女の余命を削り取ったと想像する事が出来るかも知れません。
(2004.5.16)

【まりのけっこん】 マリの結婚  [英]Marriage of Marie [仏]Mariage de Marie

(ア、原) エドモンとの結婚をインド側から見てみましょう。
 伝統的なインド社会では(まあ、インドに限りませんが)女性の地位はとても低いのです。それはヒンズー教の影響が強ければ強いほど顕著です。重要なイベントである結婚においても同様で、女性、なかでも当事者である娘(お嫁さんね)に発言権はありません。父親の定めた結婚相手を拒めば、運が良くて幽閉か勘当、悪ければ”一族の名誉を守るため”に父親に殺されることになります。私たちのような異邦人から見れば、それは極めて異様な感じがしますが、そのような娘殺しは一般的なことではないにしろ、決して特殊なことではないのです。現在でもそんなふうですから十九世紀のインドにおいてどうだったかは言わずもがなです。
 幼い(と言ってしまいますが)マリさんの結婚が、なので、父親の強い意志から来ていることは間違いありません。アニメの場合、母譲りのサリーを持ってたりして良好な親子関係だったみたいですから、マリさんが駆け落ちしたわけでも略奪された(笑)わけでもないわけです。つまりビルフランとは逆にマリ父はそれを望んだのです。世俗的な恩恵を望んだのか、娘との相性をみたのか、理由は定かではありませんが。幸いなことにマリさんはこのフランス人のぼんぼんを気に入ったのでした。
 カトリックへの改宗によってそれ(外国人との結婚)が可能だったとしてもまわりの社会との微妙な軋轢は避けられません。ヒンズー社会はインド人以外との婚姻を忌むからです。有形無形の差別が茶飯事だったことでしょう。ひょっとして両親が早くに亡くなったのも、原作でドルサニの会社があっという間につぶれたのもそのせいかもしれません。特にアニメの場合はマリさん自身がハーフなので、逆風のながで生きる母親をしっかり見てきたに違いありません。マリさんの黄金の魂はそのようにして形作られたのかも知れませんね。
(2004.9.18)

【まるがれーた】 マルガレータ  [独?]Margareta

(ア) ラ・シャペルで汽車を降りたペリーヌが立ち寄ったパン屋のおかみ。『ペリーヌ物語』の登場人物でほぼ唯一の悪人として有名。ペリーヌには贋金使いとなじり、集まってきた人にはこの娘が店のお金に手をつけたと騒いで、まんまと5フランを巻き上げてしまいます。しかし、この5フランは翌日、ペリーヌに同情したすいか畑の兄弟の巧みな誘導によってペリーヌの手元に戻ります。おまけに、自分の投げたパンでガラスを割ってしまうし、たぶん信用もガタ落ちでしょうし、結局大損ですね。

(原) サン・ドニのパン屋のおかみ。名前はありません。ペリーヌの身なりと様子から悪心をおこし、警官を呼ぶよと騒いでまんまと5フランをせしめます。しかしその後、彼女がアニメよりひどい目にあったのは、ほぼ間違いありません。何故なら、自分を間抜け(もしくは贋金使い)扱いされたと激怒したルクリおばさんが強襲するからです。

【まるせる】 マルセル  [仏]Marcel

(ア) トリエステからミラノの道中でペリーヌたちと行動を共にした陽気で明るい11,2歳?の少年。名前からしてフランス人?(ていうかパリ生まれなのね)エトワールサーカス団員である両親を追って、預けられていたトリエステのおばさんの家を飛び出してきました。空腹から盗みに手を出そうとしていたところを、結果的にマリの温情で救われます。蛙の子は蛙というか、とても身軽で逆立ち歩きやトンボきりを披露して写真興行の客寄せに活躍しました。父親のような立派な調教師になるのが夢な彼はバロンの調教に挑戦し、ミラノでペリーヌたちと別れるまでにいくつかの芸を仕込むことに見事成功しました。暗くなったかも知れない母娘の旅を盛り上げた功労者で、エドモンの死後続いた旅の中ではマルセルがいた頃のペリーヌがもっとも精神的に安定していたのではないでしょうか。

 パリの税関でペリーヌと再会し、彼女を泣かせたいけない子。初めてのパリに不案内なペリーヌにシモンじいさん宿を紹介しました。さらに世知辛いシモンじいさんとの値段交渉で活躍。エトワールサーカスのパリ公演では、道化師としてデビューしました。最終回、マロクールで幸せになったペリーヌとみたび再会した彼は声変わりしており、ペリーヌは演技が上達していました。

(原) パリの税関で会った曲馬団の男の子”牛の胃袋”がモデルのようです。塩爺さん(シモンじいさん)のところを紹介してくれました。
 昔フランスでは肉の良いところはもっぱら貴族が食し、内臓(モツ)などはもっぱら庶民が口にしていたそうで、なかでも牛の胃(みの)は最も安くて人気があったようです。だからこの奇妙なあだ名は”みんなの人気者”てな意味合いでしょう。日本で例えると、かつては庶民の下世話な食べ物だった鮨にちなんで”すし太郎”とか(笑)。

【まろ】 マロ  [仏]Hector Henri Malot

malo(ア、原) エクトル・アンリ・マロ (1830-1907) 。フランスの小説家。『ペリーヌ物語』の原作「EN FAMILLE」(邦訳名「家なき娘」)の作者。新訳下巻の解説によると、マロは当時の流行作家で、社会問題を題材にした小説を60編あまりも発表しているそうです。『ペリーヌ物語』のファブリさんの台詞や、ビルフランによるマロクール再開発計画にその片鱗がうかがえますね。もっとも、マロが著した社会小説のほとんどは忘れ去られ、現在ではマロは「家なき子」「家なき娘」の作者として有名です。

 マロは家族と旅を愛した人で、その死後に発表された作品「見習水夫」は愛する孫娘のために書かれたものだそうです。その孫娘の名前はなんとペリーヌ・メープル!(生まれたのは「EN FAMILLE」の刊行直後だとか)いつの日か、この「見習水夫」も読んでみたいものですね。

【まろくーる】 マロクール  [仏]Maraucourt

(ア) パリの北、約150kmにある村。ペリーヌ母娘の目的地。ビルフラン・パンダボワヌ社主力紡績工場があります。もともとは豊かな−というかありふれた農村でしたが、パンダボワヌ工場の発展によって風景は一変しました。マロクールはこのフランス随一の工業の企業城下町で(ロザリーの話によれば、自営業の人以外はほとんどパンダボワヌ工場で働いているとか)、ペリーヌのおじいさまであるビルフランは首長のような権力を振るっています(そういえば村長なんて人は登場しませんね)。急激に発展したせいか、ちゃんとした病院とか公園といったようなものは未整備です。

(原) オーレリィ(ペリーヌ)が最初にマロクールの町中に入ったときの印象は”なんで昼間から飲んだくれがこんなにいっぱいいるの!?”でした。ロザリーは給料日ならもっとすごいわよとけろっとしていましたが。ちょうどホガースの銅版画『ジン通り(ジン・レイン)』みたいな感じだったのでしょうか(そりゃあんまりか)。マロクール近隣のエルシェ、サン・ピポワ、バクール、フレクセールと言った村々も、同様にビルフラン・パンダボワヌ社の城下町です。

 新訳下巻の解説で訳者の二宮氏は、フランス北部のソム川とその支流ニェーブル川の合流地点にあるフリクスクールがマロクールのモデルではないかとして、実際に訪ねています。この間のわくわくするような描写は本を手にして読んでいただくとして、氏がビルフラン・パンダボワヌ社のモデルとするサン・フレール社の屋敷の写真は、びっくりするほどビルフラン屋敷にそっくりです!確か『ペリーヌ物語』のスタッフは資金不足で現地取材ができなかった、と聞いているのですが...。

 これとは別にモーグリさんは”アミアンの東約30kmのソンム川沿いの村マリクールがマロクールのモデルではないか”と推測されて、これまた現地を訪れていらっしゃいます。このマリクールを含む『ペリーヌ物語』の舞台となった場所の写真は眠夢さんのHP【ペリーヌ物語の部屋】のペリーヌの風景にて公開されています。

 南仏ローヌ川が地中海にそそぐ辺り、《橋の上で踊る》アヴィニョンのやや北にあるローマ帝国ゆかりの古都オランジュのそのまた近くのローヌ川沿いにマルクールMarcouleという地名があります。ときどきニュースで放送されるときに”マロクール”と表記されたりもしますが、場所的にも無関係でしょう。綴りも違うのでフランス語の発音ではダイブ違うのでしょうね(と想像)。ちなみにナンデときどきニュースに取り上げられるのかというと、マルクールには古い核施設があるからです。使用済み核燃料再処理施設(既停止)とか高速増殖炉とか。ついでに日本からの使用済み核燃料が再処理されているのはここではなくてフランス北西部のシェルブール近くのラ・アーグです。

 まさか、と思いますけど”マロの町”だからマロクール?
(2004.3.21)

【まろくーるこうじょう】 マロクール工場  [英]factory in Maraucourt [仏]usine dans Maraucourt

(ア、原) 7000人以上の工員が働くビルフラン・パンダボワヌ社の主力紡績工場。工場長はタルエル。慢性的な労働力不足で、たやすく雇ってもらえますが、紡績産業の未経験者はトロッコ押しから仕事を始めることになります。賃金は、週に一度土曜日に支払われます(原作では2週間ごと)。工場は毎朝5時45分に汽笛で予鈴を鳴らし、6時(?)から始業です。終業も6時ぐらい?

 と書いた後「アニメでは終業は5時でほぼ間違いない」というメールをいただきました。「ロザリーの悲しみ」冒頭で、終業の汽笛が鳴った直後、蝶の間の時計が5時を告げる描写があるからです。これはあかねさんの御指摘によるものです。ありがとうございました。

 アニメでは工員たちが普段着で働いています。一昔前までは、何でもかんでも制服を着せたがるのは、日本ぐらいのものだったらしいですが、それでも個人的には驚きです。ロザリーもひらひらの付いたいつものピンクの服装のままだし。自由の国フランスってやつ?それとも単に服を持ってなかった?

 原作には電柱が立っていると言う描写があるので、構内電信があるのかも知れません。一部には電灯もあったのかも。アニメではビルフランが動力電化の夢を語っていました。

 アニメではペリーヌたちは昼に弁当(サンドイッチ?など)を食べていたましたが、原作ではどうやら工員たちは、家に戻って昼食を取っていたようです。

 マロクール工場には引き込み線があります。パリ→マロクール直通の列車があるようなことを言ってなかったような気がするので、貨車専用支線ですね。原作によれば、この鉄道はビルフラン・パンダボアヌ社の諸工場を結んでドーバー海峡に面した港町ブローニュ行きの幹線に接続しているそうです。繊維原料を運び、かつ製品を出荷するための大動脈ですね。
(2011.1.16)

【みずきり】 水切り  [英]ducks and drakes [仏]canards et drakes?

(ア) 平たい石を投げて水面を跳ね滑らせる遊び。オーレリィ(ペリーヌ)の小屋に遊びに来たポールがやっていました。私も子供の頃、農業用水やため池でよくやりましたね。で”そんなとこに石を放り込んじゃいかん!”って怒られるのね。

【みつあみ】 三つ編み  [英]hair in plaits [仏]cheveux dans les tresses

(ア、原) アニメではOPでしかお目にかかれない貴重なペリーヌの三つ編み姿ですが、そこはそれ、懐の深いマロ翁、物語の中にそのような場面もちゃんと用意してあります。
 マロクールへの苦しい旅の途中、に追われて森の作業小屋に逃げ込むペリーヌ。少し眠った後、雨水で水浴びをした彼女は、髪を太い2本の三つ編みにして肩から垂らしています。気分転換でしょうか。しかしながら、当然腹がくちくなるわけでもなかったのです。

【みれーな】 ミレーナ  [波斯]Milena

(ア) 街道を旅していて3日も村に着かないようなボスニアの片田舎を旅するペリーヌたちが、庭先を一晩貸してもらった農家の奥さん。ちょうど初産の産み月だったのですが、急に産気付き、亭主のイーリアは後をペリーヌに任せて母親を産婆代わりに呼びに行ってしまいました。いくらしっかり者のペリーヌだとて、お産の世話はさすがに手に余ります。窮したペリーヌは、体調不良で休んでいた母マリに助けを求めました。気をもむ娘を後目にマリはてきぱきと指示を出し、無事に女の子を取り上げることが出来ました。ペリーヌは母の力に感激し、マリは赤ちゃんの元気な産声から生きる力を再び得ることが出来たのでした。

 心配するペリーヌにマリが言った言葉。「私はあなたを産んだのですよ。」いやはや、反論できません。

【みみー】 ミミー  [仏]Mimi

(ア) オーレリィ(ペリーヌ)の依頼でロザリーが選定した”ワースト・オブ・女工下宿・イン・マロクール”の住人のぽっちゃり少女。お忍びのビルフランロザリーの存在にただ一人気付きました。なかなか勘が鋭い子です。ひょっとして霊感があるのかも。煙に巻こうとするロザリーにもなかなか屈しないガッツがあります。しかし、カッサンドラの昔から、真実を語る者は世間に相手にされないのでした。
 ちなみに小鳥に変身して偵察したりなんかしないので念のため。

【めるか】 メルカ  [波斯]Melka

(ア) 雨のボスニアでぬかるみに立ち往生したペリーヌ母娘を助けてくれた力持ちの木こりドランツの長女。3年前に母を亡くして以降、母代わりに弟や妹の世話や家事一般をこなしています。すばらしいお父さんがいてうらやましいとペリーヌにいわれると、私はおかあさんのいる人がうらやましいわと答えていました。ペリーヌから旅の苦労をきくと、村から離れたことがないとうらやみます。何だか不憫な娘です。ややこしい時代・場所に生まれたことにめげることなく、彼女が逞しく生きたことを願うばかりです。

【めん】 綿  [英]cotton [仏]coton

(ア、原) 中国四千年の技と味...ではなくて、ポリネシア原産のアオイ科の植物ワタの実を包む白い繊維を紡いだもの。木綿。強く、吸湿性に優れ、染色に富み、肌に優しく、化繊と違って静電気も生じないという優れた性質を持ちます。ペリーヌビルフランの時代のみならず、現在においても最も重要な繊維素材のひとつです。また繊維を取った残りのワタの実を搾って得られるのが御存知「綿実油」。さらに若芽も食用となるのだとか。
 大麻亜麻と同様に、最も古い栽培植物の一つで、インドでは4000年以上前から栽培されていたそうです。そのせいかインドでは優れた綿織物技術が発達し、それら鮮やかな製品が大量にヨーロッパに紹介された18世紀には爆発的な人気を博しました。しかし、折からの産業革命によってそれらのコピーが大量に生産されるようになり、逆にインドの産業や国そのものを荒廃させてしまったのはなんとも皮肉なことです。植民地化されたインドでは綿花が大量に栽培されるようになりました。エドモンの放逐先はそういうわけでインドだったのでしょう。

 聞くところによれば、アニメのスタッフは古い紡績工場を参考にして『ペリーヌ物語』を制作したので、アニメに登場する機械設備は綿紡績のそれなのだとか。原作中でもアニメでも”マロクール工場で綿を扱っている”とはふれられていない(ような気がする)ので、ちょっと変と言えば変なのかもしれません。ですがフランスの繊維王と言うべきビルフランが当時大人気の綿製品に手を出していないと言う方が逆に不自然でしょうから、それはそれでいいのかも。
(2003.3.18)

【もちもの】 持ち物  [英]property [仏]propriete

(ア、原) 母マリの死後、ペリーヌの手元に残されたわずかな持ち物。旅の話をせがむビルフランに応じて答えました。ナイフ石鹸、指ぬき、針を2本、糸、地図、とアニメでは手提げ袋と水筒代わりの瓶と変な顔の犬を、原作では短い櫛を携えていました。たったこれだけを頼りにペリーヌは150km彼方のマロクールを目指して歩き続けたのでした。ビルフランでなくとも、感心するしかないでしょう。

 パリ−マロクール間150kmを”歩いて行けば5日で着けるわ”とさらっと言えるペリーヌの感覚は、会社までの3kmの道のりを車で通っている私のような生ぬるい人間からは程遠いところにあります。昔の人は肉体も精神も強靱だったのでしょうか(え、違う?私だけ根性=へなへな?!)。
 時代も何も違いますが、46歳の松尾芭蕉はあの有名な旅のとき、日に50kmを歩いたそうですから、ペリーヌの計画は平常時であればそんなに無茶ではなかったのかも。
(2002.9.5)

【もり】 森   [英] forest  [仏]forêts

(ア) マロクールを目指してバカ犬を連れて歩んでいたペリーヌでしたが、疲労と渇き、飢え、そして病気から路肩に倒れ込んでしまいました。そしてそれらから生じた絶望のうちに、自らの死を悟るのでした。せめて誰にも見られることのない場所で、とペリーヌは最後の力を振り絞って近くの森の中へと進みました。そして、ちょっと開けた場所にさしかかると、朦朧とした意識に包まれてとうとう気を失ってしまったのでした。

(原) この森はカレー街道のルザルシュとシャンティイの間、たぶんシャンティイの手前だと思われます。出発点のサン=ドニからおよそ30km程。原作によれば、そのあたりはちょうど台地の上で元々川が少なく、その少ない川も夏にはほとんど枯れてしまうというような地域だったのです。
(2010.10.15)

【もんぶるー】 モンブルー  [仏]Momble?

(ア) マロクール工場の”英語の出来る3人衆”のひとり。ただし、専門はドイツ語で、英語は日常会話もあやしい。彼の通訳が要領を得なかったため、サン・ビポワ工場の蒸気機関設置が遅れ、工場主を激怒させ、英語の出来る娘オーレリィ(ペリーヌ)が臨時通訳として抜擢される事に。いわばペリーヌの影の恩人です。

(原) ベンディットさんファブリと同じくフランソワーズ社員寮の店子。マロクール工場の会計主任。ピカルディ人で、割とねちっこい性格をしています。サン・ピポワ工場の件で恥をかかされたことを根に持ち、秘書となり自分と同じ下宿に住むことになったペリーヌに嫌みを言いました。恥をかかされた、といっても、もともとは自分の英語力がペケだったからなのだから、言いがかりというものです。

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【やぎのちち】 山羊の乳  [英]milk of a goat [仏]lait d'une chevre

(ア) ハイジやペーターがおいしそうに飲んでいたヤギの乳は『ペリーヌ物語』にも登場します。さすがに「直搾り飲み」はしませんが。ボスニアのとある宿屋でマリ着替えるのを待つ間に宿屋のおやじに御馳走してもらいました。その後も、クロアチアに入ったばかりの村で、農家のおばさんに分けてもらったりしてましたね。

 聞くところによれば、ヤギの乳は牛乳より脂肪球が小さいので牛乳の約4倍の速さで(?)消化吸収され、しかも母乳よりたんぱく質やタウリンを多く含むとか。ちょっとクセがあるものの最近では健康によいと評判だそうです。牛乳にアレルギーのある子供にはヤギの乳の乳製品が欠かせないとか。また今は昔のグルメブームにより、日本でもヤギの乳のチーズ(シェブール)が食べられるようになってきたそうです。いずれにしろ、私には未知の世界ですが。

【やどや】 宿屋  [英]inn [仏]auberge

(ア) 『ペリーヌ物語』において(多分)2番目に登場回数の多い職業。原作と異なり、アニメでのペリーヌ母娘の旅は、少なくともマリが病に倒れるまでは困窮したものではなかったので、宿屋に泊まりながら旅を続けられたからです。印象に残るのは...

 1話冒頭の宿屋のおやじ。異郷でエドモンを失ったペリーヌ母娘の行く末を案じる、人の良さそうなおやじ。きっとエドモンの葬儀でも骨を折ってくれたのでしょう。

 同じく1話後半の宿屋のおやじ。もっと大きな町でなきゃ商売にならないよ、とペリーヌに忠言していたところに、インド衣装に着替えたマリ登場。その姿を見た途端、このおやじ固まってしまいました。宿屋の食堂にいたおやじどもが全員、”ハメルーンの笛吹”状態になるのが笑えます。

 トリエステの宿屋のおやじ(6話)。警部殿の命令でペリーヌたちを連行しに来た警官を部屋に案内します。まあ、仕方のないことですが、これで私のイタリア人に対する印象は3%は悪化しましたね。

 イタリア北部アルプス麓の宿屋のおかみ(13話)。厩番のジョセフ少年の給料の前貸しをにべもなく断ります。彼女が借金を断らなかったら、母娘の旅はアルプスを越えることなく終わってしまったかも知れません。禍転じて...ってやつかも。

 フランスはミロード村の宿屋のおやじ(16話)。商売が出来ず、路銀が底を尽きかけたペリーヌに、何度も何度も何度も宿代を催促して彼女を悩ませました。まあ、仕方のないことですが、これで私のフランス人に対する印象は5%は悪化しました。

【よあそび】 夜遊び  [英]night life [仏]la vie de nuit

(ア) 秘書に取り立てたばかりのオーレリィペリーヌ)が夜間不在であったことをビルフランが咎めた言葉。ビルフランの秘書様に無礼な態度をとったことを詫びに下宿を訪れたラシューズ夫人の話を聞きつけたタルエルが工場主に伝えました。なにしろ(原作の描写からすると多分)歓楽街だけは完備しているような夜のマロクールでは氏の懸念ももっともでしょう。また原作でのビルフラン初登場の場面にもあるように、華やかでにぎやかな享楽的なイベントを好まないという氏の性格もあったのかもしれません。ということは、原作テオドールにはひどく幻滅したでしょうね>ビルフラン氏。

(原) 結局、狩猟小屋の話に興味をひかれたことは同じでも、同様な場面でビルフランが問題にしたのは、ペリーヌが氏を欺いていたと言う点でした。つまり、フランソワーズの女工部屋にいたはずなのに、実はすぐそこを出ていたということです。

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【らしゅーず】 ラシューズ  [仏]Lachaise

(ア) ラシューズ夫人。”ラシューズ夫人の店”といえば、マロクールで知らぬ者のない高級婦人服店で、もちろんビルフラン・パンダボワヌ社御用達です。一般女工などにはとても手が出ないような品を扱っているのが誇りです。ビルフランの秘書となったオーレリィ(ペリーヌ)が店を訪れたとき、接客態度に頭に来たロザリーが素性を明かすまでは、慇懃無礼な態度をとっていました。この失態を取り繕おうとラシューズ夫人が夜分ペリーヌの下宿を訪ねたことから、ビルフランのペリーヌに対する興味がますます深まることになるのですから、世の中分からないものです。ちなみにこの時ペリーヌが買ったのは、ワンピースと下着、帽子と靴と靴下です>ロザリーの見立て。

(原) 翻訳当時の日本語表記のためなのかどうか、原作では”ラシェーズ夫人”。”夫人の店は教会の広場にある”とあるので、間違いなく一級の商業地に立地した高級ブティックですね。ビルフランの言葉に不安をおぼえながらも一人で訪れたペリーヌが、ここで購入したのはブラウスとスカートを1着、靴下2足、シュミーズを2枚、ハンカチを3枚、それと靴と帽子で、最も欲しかったのはハンカチだったようです。アニメとは異なり、ラシェーズ夫人はペリーヌの御機嫌を取りに下宿を訪ねたりしませんでしたし、何よりペリーヌはふらふらとへ行ったりせずに、フランソワーズの新館の下宿で9時には床についたのです。しかし、ビルフランの元には、新秘書の好ましからざる情報がゼノビ叔母さん経由で伝わるのでした。
 ちなみに原作では店員さんにも名前があって、彼女の名前はヴィルジニー。ペリーヌが安物を少ししか買わないと知ってあからさまに軽蔑します、まるで女主人の鏡のように。
(2003.5.4)

【らんぷ(1)】 ランプ  [英]oil lamp [仏]lampe a petrole

(ア) ペリーヌ母娘の家馬車の旅の友。ある時は御者台に吊し、あるときは手に持って使用しました。先を急ぐ旅でもあったので、ランプが活躍する場面も多かったでしょう。落としたりしても割れたり燃え上がったりしない根性のある奴(笑)。時代的には石油ランプのはずなのですが、どこから油を入手していたのかな?
(2003.1.3)

【らんぷ(2)】 ランプ  [英]oil lamp [仏]lampe a petrole

(ア) 肺炎にかかったベンディットさんピキニの病院に搬送した件のお礼に、ファブリさんからオーレリィ(ペリーヌ)に贈られました。ペリーヌは”これで夜でも本が読める”と喜んでいました。

【りしょん】 リション  [仏]Luchon?

(ア、原) マロクール村の医師。ビルフラン・パンダボワヌの主治医(兼産業医?)。フランスを代表するような企業家の信任を得ているのに、入院を必要とするような患者(肺炎にかかったベンディットさん)に対応できるような医院を所有していません。不思議ですね。アニメでは銃に撃たれたバロンを手当してくれました。富豪のお抱え医師のところに、いきなり怪我した犬を連れてきたら、「わしはビルフラン様の主治医だぞ」とか言って腹を立てるでしょうね、普通は。こぼしつつも手当をしていたところをみると、この先生、なかなかの人格者かもしれません(もしくは、犬好き?)。ただし、名医というわけではなさそうですが。
 原作ではリュションと表記されています。今DVDで見直してみたらアニメでもやっぱり”リュション”と呼ばれていますね。いやまいったね、あっはっは(あはは、って、あんた、それだけかい!)。
(2002.9.30)

【るーあん】 ルーアン  [仏]Rouen

(ア、原) パリの北西約120kmにあるセーヌ河畔の港湾都市。ジャンヌ・ダルクが火刑に処せられた地としても有名。新しい託児所の視察にファブリが出張しました。ベンデットさんに、あそこにはうちの参考になるような設備なんてないのに、何しに行ったんだ?なんて言われてましたが。
 けれどもルーアン近郊では繊維原料の亜麻の生産が盛んなようですよ。
(2010.11.10)

【るい(1)】 ルイ(1)  [仏]Louis

(ア) エトワールサーカスの道化師。マルセルの初舞台の相方。声が腹話術の人形みたいです。

【るい(2)】 ルイ(2)  [仏]Louis

(ア) ビルフラン邸の召使いのひとり。うっかり者で、召使い頭のセバスチャンに注意されることもしばしばです。オーレリィ(ペリーヌ)が邸に来ることになったときは”トロッコ押しの娘なんか、ふふん”と馬鹿にしていたのに、一週間後には彼女の飼い犬の犬小屋の製作を巡ってフェリックスとペンキの刷毛を奪い合うていたらくでした。マロクールにやって来たときの年齢がもう少し上だったら、ペリーヌは”魔性の女”と噂されていたでしょう。

【るくり】 ルクリ  [仏]La Rouquerie

(ア) ラ=ルクリ。ペリーヌの命の恩人。パイプで煙草を吸う屑屋のおばさん。知らない人からは、”男みたいな格好をしたおばさん”といわれます。地方を回って兎の毛皮、古鉄、ぼろ布などを回収するのが商売。同業のシモンじいさんとは旧知。パリの馬市に商売用のロバを探しに来たところに、パリカールを売りに来たペリーヌたちと遭遇、パリカールを安値(ペリーヌの予定の1/3以下)で引き取ることになりました。その後、アミアンへの廃品回収の途中で、行き倒れになりかけていたペリーヌを発見、介抱します。以降、ペリーヌとマロクールまでの道中を共にしました。ペリーヌの身の上を知り、人柄を知るにつれて、彼女を養女にしたいと思うようになりますが、ペリーヌに丁寧に断られました。それでもその後も態度が変わらないのが、この人のりっぱなところです。ペリーヌをマロクールに見送った後も、ベンデットさん搬送のためにピキニを訪れたペリーヌと再会し、良き理解者となるファブリさんの興味を引く言葉を叫んだり、フィリップ弁護士の調査で(たぶん)キーマンとなったりして、いろんな意味でペリーヌの大恩人ですね。

 商売で訪れた家の奥さんに「あんたに、あんな大きな娘がいるとは知らなかった。器量良しじゃないか。」と言われて「私の娘だからね」と、とてもうれしそうだったのが印象的。 

(原) 空腹で行き倒れになりかけていたペリーヌにパンを食べさせる合間に身の上を聞いていたルクリおばさんは、例のパン屋で5フランを盗られた件を聞くに及んで激怒しました。
「そりゃあ泥棒だ。私は贋金なんぞ、誰にも渡しゃあしないよ。だって、私はそんなものを誰からも掴ませられはしないもの。安心をおし、サン=ドニを通るとき吐き出さしてやるから、それとも町中をけしかけてくれる、私はサン=ドニに友達があるんだ、やつの店に火をつけてやる。」
 お、おばさん、冷静に、冷静に。いくら悪党でも5フラン(25000円?)猫ババして店に火付けられたらかなわんでしょう?ね?
 彼女の家はパリのシャトー・デ・ランチエ街にあるそうです。どこだかわからんけど(笑)。
(2003.5.25)

 今回、地図を作ってみて気付いたことは、ルクリおばさんの活動範囲がパリ近郊に限られていることです。ペリーヌの今後を思案していたとき、”クレイユまで行く。その先には行けない。”と言っています(新訳では”行かない”)。まるで、ルクリおばさんには、クレイユから先にはどうあっても進めない理由があったかのようです(クレイユはパリから50kmほど北にある町)。
 イタリアでは現在でもごみ収集はその筋の人が担っているようですが、当時のフランスの廃品回収にも何らかそういう縛りがあったのかもしれません。あるいは組合の取り決めとか。こっちのほうがフランス的かな(笑)。
(2010.10.29)

【るぶらんしょうかい】 ルプラン商会  [英]Leblanc & Co. [仏]Leblanc et Co.

(ア) 「フ」なら繰り返します。ビルフラン・パンダボワヌ社の取引相手。何回かその名が登場しているので、お得意さまのようです。担当はテオドールでしたが、彼がはっきりした返事をしなかったので、態度を硬化させてしまいました。ちなみに”blanc”は”白”の意。
(2002.9.30)

【るんるん】 ルンルン  [日?]Lun Lun?

(ア) ペリーヌ物語』のOPで歌われる謎の言葉。一般的には”楽しい”の擬態語。しかし、その起源は謎に包まれています。
 1.『花の子ルンルン』起源説…少なくとも東映動画のサイトには「「ルンルン気分」という言葉が使われるようになったのはこの作品の後から」とあります。でも『花の子ルンルン』の放送は『ペリーヌ物語』の翌年なんですよねえ〜。でも知名度は『花の子ルンルン』の方が上かなぁ(哀)。
 2.チベット起源説…ラマ教では身体を巡っているエネルギー(気のようなもの?)をルン(風)と呼んでいます。これが語源なら『ペリーヌ物語』のOPは、軽やかで楽しげな曲想ながら、実はパワーをググッと鍛練しているという侮れない歌ということになりますが(笑)。
 3.北欧起源説…RPGファンには今や知らぬ者はない...かどうかは知りませんが有名な碑文文字、ルーン。これはゴート語で《秘密》を意味します。これを起源とすると『花の子ルンルン』のOPは、”ひ・ひ・ひ・秘密 秘密、ひ・ひ・ひ・秘密 秘密...”というあやしげな歌になりますが(笑。ファンの方、ごめんなさいね)。
 ふーむ。謎は深まるばかりです(勝手に深めてれば〜?)。
(2002.9.30)

【れ・みぜらぶる】 レ・ミゼラブル  [仏]Les miserables

(ア) ファブリさんの愛読書。後にベンディットさんピキニの病院に搬送した件のお礼にランプと共にオーレリィ(ペリーヌ)に贈られました。幸せの涙を流す直前にはビルフランに読んで聞かせてもいます。ユゴーの長編小説。1862年刊。ひと切れのパンを盗んだために19年間を牢獄で送ったジャン・バルジャンの苦難にみちた更生を描いた大作...らしい。日本では『噫(ああ)無情』訳:黒岩涙香(1902年)として親しまれた...ようです。何せ読んだこと無いのでわかりません。『アーム・ジョー』なら読みましたが(笑)。

【ろざりー】 ロザリー  [仏]Rosalie

(ア) オーレリィ(ペリーヌ)の親友。赤毛を二本の三つ編みに綯ったそばかすだらけの女の子。というと、この物語の十数年後に大西洋の対岸で別の物語の主役を張った少女を思い出しますが、空想癖は無いもののおしゃべりなところは同じです。ただし、ロザリーは”いひひひひ”と笑いますが。ビルフラン・パンダボワヌ社マロクール工場でくだ巻機の係として働いていますが、帰宅後や休日はの食堂「シャモニー」を祖母フランソワーズとともに手伝っています。家族は父と祖母、そして弟ポールです。ビルフランは名付け親で、彼はロザリーのことをよく気に掛けていたようですね。長靴スケボー(?)の名手。

 マロクールに入ったペリーヌが最初に遭遇した村人で、その時ロザリーはジャガイモ山盛りの篭を(多分)ピキニから運んで帰るところでした。すぐにペリーヌを気に入って、後で工場就職の口利きを頼みに来た彼女に快諾したのはもちろんのこと、食事と下宿の紹介と一夜の宿を提供してくれました。初めてあったペリーヌに”友達になってね”というあたり、ロザリーは同じ年頃の友達のいない寂しい少女だったのかもしれません。エドモンの乳母の孫ということでビルフランのお気に入りでしたが、その後継者の親友ということになってお父さんも鼻高々でしょう。もっともロザリー本人は富豪の後継者ではなく”オーレリィ”と友人になったので、そんなことは何とも思わないでしょうが。サンタ・ペリーヌのプレゼントは派手な真っ赤の毛皮のコート。ペリーヌのくたびれたベストを気遣ってくれたことへのお礼でしょう。

(原) 工場で機械に指を巻き込まれるという労災にあってしまいます。アニメとは違って、指を切断したか神経を傷つけたかして、傷が癒えた後も復職はしませんでした(できなかった?いずれにせよ、ゼノビ叔母さんは賠償金をせしめたでしょう)。両親ともに亡く(弟もいない)、祖母のもとにいますが、なにかと辛く当たるゼノビ叔母さんがいやで工場に働きに出ていました。しかしペリーヌお嬢様の出現で彼女の扱いも変わったはずです。労災のときタルエルに命じられてポケットから出したものは、笛、小骨、サイコロ、葡萄酒瓶のかけら、小銭、鏡。この年で博打はいけませんね。それに小骨って何ですか?

 新訳でははっきり「小指を切り落とした」とあります。それをたいしたことないってあなた、タルエルさん!そしてポケットの中身については笛、おはじき、サイコロ、かんぞう飴、小銭、鏡とあります。小骨→おはじきはなんとなくありかなと思いますが、葡萄酒瓶のかけら→かんぞう飴ってのは????

 どうでも良いことですが、ロザリーの命名のもとになったのは、ヴィルニューブの聖女ロザリー(Rosaline de Villeneuve 記念日は1/17)じゃないですかねえ。聖女ロザリーは13世紀フランスのとある貴族の娘でしたが、慈悲深く、貧しい人にたくさんの施しをしていました。しかし父親に「もったいない」と施しを禁じられてしまいました。しかし、人々の貧困に心を痛めていた彼女は、隠れて施しをしていました。あるときエプロンに食べ物を一杯にして運んでいた彼女は父親に見つかってしまったのです。そこに隠しているものを見せろ、という命令にしぶしぶエプロンを開くと、そこからは何と大量の薔薇の花がこぼれ出たのでした。この奇蹟に改心した父親は以来宗教活動に励んだとか。
 ヴィルニューブの聖女ロザリーはいろんな奇蹟をおこした人のようで、彼女の兄が十字軍に従軍して捕虜になったときも、薔薇の雲に包まれたロザリーの導きによって無事に帰還出来たのだとか。
 心優しいロザリーにゆかりの聖人とすると、ふさわしいエピソードの持ち主だと思います。
(2002.9.16)

【ろっこ】 ロッコ  [伊]Rocco

(ア) 旅の写真師ピエトロ・ファンファーニの相方の小太り男。口上担当。ミラノへの道中でペリーヌたちと鉢合わせしてしまいます。”女の写真師?はっ”とはなっから馬鹿にしていましたが、集客能力でも写真技術でもてんで太刀打ちできず、商売上がったり状態となってしまいます。だいたい種馬の国イタリア(偏見)で美人母娘写真屋に勝てると思うのがそもそも間違いです。危機感を感じた彼は相方も巻き込んでペリーヌたちの写真機を盗み出そうとしますが、マルセルや宿屋のおやじの活躍もあってこれまた失敗してしまいます。しかし、泥棒として前に突き出された二人を躊躇無くかばうマリの言葉に、悔悛の涙を流すのでした。

 この話で、ロッコたちに対するペリーヌの態度がちと気になったマリは娘にお説教をします。例の「人に愛されるには・・・」っていうやつです。きれい事過ぎるという人もあるかも知れません。でも世の中は広いもので、実践してしまう人もいるのです。例えば1万年程も戦闘らしい戦闘がなかった縄文の人々にはそんな人が多かったのかも知れませんね(名劇的でないたとえ)。

 (いえ、全く関係ありませんが)14世紀のフランスに聖ロッコ(またはロクス)という聖人がいました。彼はイタリアで病んだ人(ペスト患者)を献身的に看病した人なのですが、ある時自分がペストにかかってしまいました。彼は死期を悟り、深い森の中に入っていきました。しかし、彼の飼い犬の助けによって命を救われたのでした(あ、ちょっとデジャビュー。でも、ここからはちと違う)。故郷に帰った彼は親戚の元を訪ねたのですが、大病によって外見が全く違っていた彼は不審者と疑われ、ついには獄死してしまうのでした(ああ、いきなり親戚を訪ねなくて良かった良かった>何の話?)。
(2002.9.4)

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yuri    yuri

【わいん】 ワイン  [英]wine [仏]vin

(ア) シモンじいさんとパリカールの好物。ペリーヌもときどきいただいていたようです。といっても、もちろん飲んだくれていたわけではなくて、ちゃんとした食事(ビルフラン邸での晩餐やルクリおばさんとのお別れ会とか)やお祝いのときだけです。キリスト教文化におけるワインの立場は単なるお酒を超えたものがあるようですし、何と言ってもフランス人ですからね。まあ、シモンじいさんは単なる酒飲みですが。

 ちなみにマロクールのあるピカルディー地方では、シードル(リンゴのお酒)もよく飲まれているそうです。このシードルを蒸留したのがアップルブランデーで、特にノルマンディー地方で作られたものがカルヴァドスと呼ばれる、ようです。

 とは言え、ペリーヌたちは長い長い旅をしていたわけで、道中には生水が飲めなかったり、水をくめないこともあったでしょう。そういうときには腐りにくい携帯飲料としてワインを飲むことがなかったとは言えません。ですから実は結構いける口だったのかも>ペリーヌ(笑)
(2003.4.28)

【わるがき】 悪ガキ  [英]brat [仏]gosse

(ア) スイスのとある村で、一緒に遊ぼうとペリーヌに声をかけたものの、つっけんどんな返事しか帰ってこなかったので、あろうことか石を投げつけだした馬鹿者ども。そんなヒネた根性では永世中立もままならんぞ!家馬車に戻ってきたマリに、ペリーヌが腹立たしさを訴えると、あなたは女の子なのよとたしなめられた後で「そんなこと、いままでもあったでしょ」っておかあさん、あまりに辛すぎるお言葉を、そんなさらっと言ってしまって...。砂の器ですか。

 でも、むくれたペリーヌもかわいいです。

【を】 

(原) チョマ(苧麻)、ラミー、からむしとも言うそうです。高さが1〜1.5mにもなるイラクサ科の多年草で、アジアの東部から南部に広く分布します。植物繊維の中では最も強靱だとか。ですが、原著では大麻ジュートだったのではなかろうかという気がします。というのはビルフランの知っている英語の繊維用語に”ラミー”がなかったから。解明には新訳を待つしかないです。

 といっていたら、新訳ではジュートあるいは大麻になっていますね。私の憶測は正しかった!じ〜ん。

 などとぬか喜びしていたら、どうやら繊維原料としての大麻を「苧」とも呼んだようですね。とほほ。

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