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【たいちょう】 隊長  [英]captain [仏]capitaine

(ア) オーストリア軍の大尉。クロアチア独立運動のリーダーのひとりゴルジモフ伯爵を追っています。とはいえ追跡中に早々と宿をとってしまったり、ウィーンにいる恋人あてに写真を送ったりと、声とお髭は厳めしいのですがとても軍の精鋭とは言えなさそうですね。まあ、おかげでペリーヌたちは助かったわけですが。
(2003.1.3)

【たいま】 大麻  [英]hemp [仏]chanvre

(原) マロクール工場での主原料の一つ。ヘンプ。学名はカンナビス・サティーバ。高さが2〜3mにもなるクワ科の1年草。中央アジア原産ですが、最も古い栽培作物のひとつで、ほぼ世界中に分布します。荒れ地でもよく育ち、成長の速いことでも有名です(牛若丸様御用達)。実は栄養価が高く食用に(小鳥の餌とか、《麻の実》として七味唐辛子にも入っていますが、古代中国などでは主食の一つでした。ところで、七味唐辛子って関東と関西で中身が違うのですね。)また油も採れます。さらに葉は薬用に、茎からは強靱な繊維が得られます。《麻》というのは、広い意味では植物から得られる繊維を差す言葉のようで、転じて最も広く栽培されていた大麻のことをさすようになったらしいです。ただし大麻の繊維原料としての価値は、化学繊維の登場と、麻薬の弊害の喧伝によってほぼなくなってしまいました。

 この植物の花穂と葉の部分を乾燥させて、紙巻きタバコのように吸引できるようにしたものが、いわゆるマリファナで、有効成分THCを含む樹脂を濃縮した物がハッシッシです。麻薬としての大麻は、興奮剤でも抑制剤でも幻覚剤でもないのに、それらのような作用をもたらすという非常にユニークな存在です。依存性は低く(一説にはコーヒー並み)毒性もないようです。タバコの方がケタ違いに有害のようですが、ただし、大麻は麻薬=違法なので興味ある人はアムステルダムに行くしかありません(確かオランダでは合法)。大麻には抗ガン剤などの副作用による強い吐き気を抑える働きがあり、緑内障と多発性硬化症(?)にも効果があるらしいです。乾燥させた大麻つまりマリファナは、ビルフラン氏によれば「キャラメルのような匂い」がするそうですが、経験者のみなさん、そこんとこどうですか?(笑)

 現在環境面から大麻の再評価がなされています。大麻は強靱な植物で、栽培に化学肥料や農薬を必要とせず、CO2固定能力も高いからです。THC含有率が従来の1/10〜100と非常に少ない産業用栽培種も開発されていて、長い目で見るとこれから再び脚光を浴びる作物といえるかもしれません。

 新訳では大麻ですが、旧訳では「苧(を)」になっています。教育的配慮でしょうか?(>違いました。苧の項を参照。)

【だっか】 ダッカ  [波]Dacca正式にはDhaka

(ア、原) ペリーヌの生まれたインド東部の都市。当時はイギリス領インドですが、現在はバングラデシュ人民共和国の首都。インド最高の綿の産地で綿産業で栄えましたが、『ペリーヌ物語』の時点では宗主国イギリスからの綿布逆輸入によって産業は壊滅的打撃を受け、寂れていました(イギリスもえげつないことしますなあ)。
 父ビルフランと仲違いしたエドモンの買い付けを口実に放逐されたのがダッカ。ここでマリと出会い、結婚し、娘ペリーヌが誕生、一家はダッカで3年ほど暮らしました。のちにペリーヌはビルフランの秘書となって英語の手紙や新聞の翻訳を任されることになるのですが、父母を思い出させる”ダッカ”関係の記事を見ると心乱され、ビルフランに訝しまれるのでした。

【たまご(1)】 卵(1)  [英]egg [仏]oeuf

(ア) おかあさんはもっと食べないといけない、特に卵は良い、とサンドリエ先生に奨められたペリーヌマリに食べさせました。完全栄養食とよく言われる卵ですが、ペリーヌがどのように調理してマリに与えたのかはわかりません。多分、パン粥とかスープに入れるかしたのでしょう。

(原) 新しい卵よ、私、透かして見たのよ、と食欲のないマリをけなげに励ますペリーヌ。卵を透かしている姿を想像するとかわいらしい。

【たまご(2)】 卵(2)  [英]soft-boiled egg? [仏]oeuf a la coque半熟卵

(ア) バロンが見つけた鴨?の卵。ペリーヌは、鴨の親がかわいそうだからいたずらしちゃだめよ、とバロンをたしなめます。んー、なんか仏教的。

(原) 喜望島の探索中にペリーヌが見つけた小鴨の巣にあった、くすんだ白地にはしばみ色(黄茶色?)の斑点のある卵。この時は探索中だったので卵を取らなかったのですが、その夜、めくるめく卵料理の夢に苦しめられるほど(?)後悔します。この卵料理の夢はなかなか楽しげで、映像化して欲しかったです。ペリーヌのイメージが壊れそうですけどね。

 胃袋の抗議に促されたペリーヌは、次の日小鴨の卵を5,6個頂戴しました。かつてなら迷わず巣を空にしたペリーヌですが、苦しい経験をいくつもしてきたため慈しみの心が深くなり半数の卵を巣に残しました。ペリーヌは卵をおき火の中で半熟卵にし、パンを浸して食べました。こんなおいしい物はこれまでに食べたことがない!

【たまご(3)】 卵(3)  [英]beaten egg? [仏]oeuf battu?溶き卵のつもり(汗)

(原) 晩餐に招待したロザリーのために取ってきた田鶴の卵。小鴨の卵よりは小さいようです。かきたまスープにしました。

 新訳ではバンになってました。田鶴という鳥は日本の文学にしか登場しないもので、通常はツルと考えられているとか。いわゆる水鳥風の姿をしたバンと、首も足も嘴も長いツルとでは全然違うのですが。うーん。
 原文では "oeufs des poule d'eau" となっていて”バンの卵”でした。
(2003.3.18)

【たるえる】 タルエル  [仏]Talouel

(ア) ビルフラン・パンダボアヌマロクール工場の工場長。工員には厳しく(というか生かさず殺さずといった感じ)、ビルフランにはへつらっています。が、エドモンが亡くなればいずれ工場は自分に任されると思っており、それはテオドールの場合とは異なってあながちあり得ない話でもなさそうです。それでエドモンの消息を知りたがり、ビルフラン宛ての英語の手紙を扱うオーレリィペリーヌ)に内容を知らせるように迫ったりしました。また工場内やビルフランの動静を探るために息のかかった(というか脅しのかかった、かも)者を多数配置しているようです。ビルフランに工場長を任されているだけあって実務能力はあるようですが、ロザリーたち工員に言わせれば”工場が彼らの物になったらおしまい!”と手厳しい評価。とはいえ、オーレリィ=エドモンの娘=パンダボワヌの後継者=ペリーヌ!と知らされて落胆した翌日には、朝一番に御前にお祝いに駆けつけるあたり、あっぱれサラリーマンの鑑かも知れませんね。

 19世紀のフランスでも英語が出来なければ、素性の怪しい13歳の少女を「さま」扱いしなければならないことが分かります。ペリーヌに対する態度は彼女の立場によってのみ決まるようですね。

(原) いたち、やせっぽち、ユダ。工員たちに嫌われ、恐れられているビルフラン・パンダボワヌ社マロクール工場の工場長。二十歳ぐらいの時には自分の名を読むことも書くこともできませんでした。そこから工場No,2の地位に上り詰めたという努力家で野心家。かつてビルフランとエドモンの諍いに介入して仲違いを決定的な物にしたという噂もあります(情報源はファブリさん)。工場主の甥たちには慇懃無礼に振る舞い、ビルフランにはおべっかを遣って”殿の御覚え麗しく”するのが得意。実務能力は十分に持ち合わせていることはビルフランも承知で、彼が息子の死を知って心身ともに衰えた一週間、タルエルに工場の全権を与え有頂天にさせました。

 どうやら彼はペリーヌの顔つきからオーレリィ=エドモンの娘と薄々勘付いていた節があります。さすがにくせ者ですね。

【だるじー】 ダルジー

(原) 新訳では”ダルージー”。ペリーヌ一家は、マリの両親が相次いで亡くなった後、ダッカからインド北部のデラに移り住んだのですが、その間にエドモンの仕事の関係でダルジー方面に旅をしました。新訳の訳注では”ビルマ(ミャンマー)の漁港か?”とあります。

 素人考えで”〜方面”というからには割と有名な地名だろうということで地図を見ると、ビルマとは反対方向にダージリン(Darjeeling)があるのに気付きました。紅茶で有名なところですね。古い地名はドルジェ・リン(Dorge Ling)だとかで、ダルジーと読めなくもないでしょ(我田引水)?両親を亡くしたばかりの若い妻を連れていくのに有名な避暑地はふさわしいと思うのですが、どうでしょう。その後、エドモンはデラでヒマラヤの調査に取り組んでいくことになりますし。

 たぶん違うでしょうが、後に一家が住むことになるデラ・ドゥーンのさらに北にダルハウジー(Dalhousie)という高原避暑地があるそうです。名前がインド総督からきているようなのでイギリスが開発した町なのでしょう。

【ちーず】 チーズ  [英]cheese [仏]fromage

(ア) ペリーヌの大好きなものの一つ。お産のお手伝いで貰ったときに大喜びでだっこしてたのは丸いセミハード(かハード)のチーズでしたね。ピカルディ地方のチーズを探しましたが、エダムチーズに似たミモレットとか近隣のノール地方の特産マロワルチーズが親しまれているようです。マロワルは見た目が厚揚げのような(笑)褐色のウォッシュタイプのチーズで、力強いすなわちものごっつい匂いと味が特徴です。取りあえず私にはダメそうです。お父さん子のペリーヌなら平気で食べちゃうんでしょうね。あら、おいしいのよ、とかなんとか言いつつ。
(2003.10.19)

【ちびるす】 チビルス  [仏]Tiburce

(ア) 女工たちがビルフランマロクール工場で働く間、その子供を預かっていたおばあさん。彼女の家が火事になるのですが、そのときこの婆さんは酔っぱらって寝ていたため、子供を救い出すことが出来ませんでした。結局逃げ遅れた3人の子供が犠牲になってしまいました。ビルフランの馬車を御していてたまたま通りかかったオーレリィペリーヌ)は、火事場の悲惨な様子にひどく心を痛めます。せめて葬儀に出て下さいと訴えるペリーヌの言葉に、ビルフランは自分が見逃していた大切な事柄に気付かされるのでした。

(原) 学校の近くの庭の奥にある古ぼけて崩れかけた惨めなわら家に住む飲んだくれの老婆(なんだかあんまりだ)。託児所に預けるには小さ過ぎる子供を預かっていました。子供のマッチ遊びから火が出てしまいます。結果的にはこの惨事が、ビルフランのマロクール再開発計画のきっかけとなりました。

【ちょうせんあざみ】 チョウセンアザミ  [英]artichoke [仏]artichaut

(原) アーティチョーク。銀貨を取り上げられ、泥棒!と罵られパニくったペリーヌが逃げ込んだのは原作ではスイカ畑ではなくアーティチョーク畑。たぶん日本ではあまり馴染みがなかったからか、絵的にぱっとしないかで替えられたのでしょう。”つぼみをゆでて食用にし、一片づつ歯でしごくようにして食べる。味はアスパラガスに似ている”と事典にはあります。私は食べたことありませんが、きっとアスパラガスの方がうまいに違いないです、ええ。そうですとも。

【ちょうのま】 蝶の間  [英]Room of butterfly [仏]Piece de papillon

(ア,原) 機密保持と小さな秘書の身の安全を危惧したビルフランが、オーレリィペリーヌ)を住まわすことにした屋敷の部屋の名。3階にあります。ビルフラン邸で最も格の高い(?)客間で、ビルフランの姉のブルトヌー夫人が滞在するときにはいつも蝶の間に入ることになっていたようです。当時はまだ珍しい電燈や呼び鈴(ブザー?原作では1回鳴らせばバスチアン、2回だと小間使いとあります)、浴室(多分水洗トイレも)、小温室までがしつらえてあります。

(原) 蝶の間の名の由来は、部屋のタペストリーに華麗な蝶が描かれているから。アニメでは部屋の中に小温室が設えてありますが、原作ではそれらは豪華な絨毯の柄です。そのままでは絵的にぱっとしなかったんでしょうかね?

 もともとヨーロッパでは『蝶』というと、移り気とか霊魂(ふわふわ飛ぶから?)、死と再生(特に死のイメージ)などという感じであまりいい印象はなかったようです。でも時はジャポニズムなアール・ヌーボーの御時世ですからね。イメージが良くなったのかも。

【でいたん】 泥炭  [英]peat [仏]tourbe

(ア,原) ピートともいいます。湿地や沼に枯れた植物が厚く堆積し、腐敗せずにある程度炭化したもの。黄褐色または褐色を呈し、乾燥すれば燃料となります。現在でのもっとも有名な用途はウイスキー製造のモルト乾燥で、あの香りはビートで燻されて醸し出されます。ソム川流域であるマロクール周辺には泥炭地が広がっており、採掘跡に水の溜まった池や沼がそこかしこにあります。アニメではペリーヌがマロクールに到着した話で、村の入り口の風景に泥炭採掘場の様子が描かれています。

【でぃーぶいでぃー】 DVD  [英]Digital Versatile Disc

(ア) 文明の利器。これがなければ、いい歳こいて”幸せの涙”を流すこともなかったでしょうし、へなちょこなサイトを作ることもなかったでしょう。

    【ておどーる】 テオドール  [仏]Theodore

(ア) 鳶に油揚げをさらわれた人。ビルフランの甥でペリーヌの父エドモンの従兄(ペリーヌから見ると従兄弟小父(いとこおじ)ということになるそうな)。スタッフに混乱があったようで、テオドールはビルフランの妹の息子でありながら、ビルフランの姉であるプルトヌー夫人の息子ということになってしまいます。マロクール工場近くに屋敷を構えますが、遅刻常習者です。
ビルフランの評「猿のほうがましだ!」
ファブリの評  「あなたは礼儀知らずですね!」
 タルエルにも心中軽んじられながらも、甥である自分が工場を受け継いで当然と思っている、ある意味立派な人。しかし、突然現れた謎の娘オーレリィペリーヌ)がぐいぐいとビルフランの心に食い込んでいくのを見て脅威を感じたのでしょうか、タルエルを工場分割の計で懐柔しようとしたり、母を呼び寄せてペリーヌを味方にしようとしたりしました。そんなことする前に英語を勉強するべきだったと思いますね。猟が趣味ですが、腕はたいしたことなく、それどころかだんだん落ちてきているようです。タルエルとは違って、なんとなくペリーヌを好かないようでしたか、後に身の上が明らかになったペリーヌに”身内”と言われただけで態度を軟化させるとは情けないです。

(原) ビルフランの兄の息子。母の名はスタニスラス・レムじゃなくてパンダボワヌ。父は裕福な織物商人。エドモンと入れ替わりにパンダボワヌ工場で働き始めたので、商取引などの経験はカジミールよりは豊か。三十代前半。ビルフラン・パンダボワヌ社に入る前はパリで遊び暮らしていたお坊ちゃん。週末毎にパリで過ごすことを生き甲斐としています。んなわけで、人にも自分にも厳しいビルフランとそりが合う筈がありません。工場近くの旧ビルフラン邸(つまりエドモンが育った家)を与えられ、住んでいます。

【てさげかばん】 手提げ鞄  [英]pouch [仏]pochette

(ア) ペリーヌに残されたマリの形見。マリの結婚証明書を入れたハンドバッグと、ナイフや針といった道具類が入っています。たぶん売らなかったであろう少なくとも3枚の写真が大切に仕舞われているはずです。誰が取ったのか知らないがペリーヌたちの家族写真、マリの撮った撮影見本のペリーヌの写真、そしてペリーヌが撮ったのかも知れないインド衣装のマリ。

(原) パリからマロクールへの苦しい旅の間、鞄なぞは持ち合わせないペリーヌは、わずかな荷物をぼろきれにくるんでポケットに入れていました。ちなみに、このぼろきれ、お風呂の時には垢擦りとタオルにもなります。あーら便利(ほんとか?)。

【でら】 デラ  [英?]Dehra?

(ア、原) 妻マリの両親の会社が倒産した後、エドモンがマリと幼いペリーヌを連れて移り住んだヒマラヤ山中の町。新訳の訳注には”パンジャブ州のデラ・ドゥーンと思われる”とあります。デラ・ドゥーン(Dehradun)はデリーの北東300kmにある町で、パンジャブではなくてウッタランチャル州の州都だそうです。特産物はお米で、近くに温泉があるとか。一家はここで幸福な数年を過ごしました。

【てんし】 天使  [英]angel [仏]ange

(ア) 背中に羽の生えた人というと、血色の悪い肌に赤パンツのにーちゃんを想像してしまいますが、ちょっと違います(ちょっとじゃなかろうが)。しかも、この場合羽が生えていませんしね。熱にうなされるベンデットが彼を搬送する馬車の御者台にいたオーレリィペリーヌ)を見誤って言いました。しかし名作劇場屈指のスーパーヒロインに向かって”死の天使”と言い放つとは、なかなか大したものです(何が?)。
 または、雪上の天使。「お前もうまいことを言うな。」いやそれほどでも旦那様。
(2002.9.30)

【でんとう】 電燈  [英]electric lamp [仏]lampe electrique

(ア) フランス1,2を誇る大企業の創始者ビルフラン屋敷には自家発電装置があり、邸内各所には電燈が備えてあります。この大邸宅に住まうことになったオーレリィペリーヌ)は案内された蝶の間で、初めて見る電燈に驚いて何度も点けたり消したりしました。その様子を見ていた小間使いのアンリエットは”この御屋敷に始めて来た人はみんなそうするのですよ”と気まずいかもしれないペリーヌを気遣ってくれました。

(原) ペリーヌは小間使いが点けた電燈の光を見て、パリからマロクールに至る辛い旅の途中で遭遇した激しいの雷光を思い出しました。ところで、この電燈のフィラメントも京都の竹で出来ているのでしょうか?電灯の発明は1835年 リンゼイ(イギリス)、1878年 スワン(イギリス)、1879年 エジソン(アメリカ)と続いて1880年 エジソンが商品化しました。したがってアニメの時代設定では何というか”一品物”の電燈ということになり、物凄く珍しかったでしょう。一方、原作の時代が私の想像する1890年頃なら、大都市ならそろそろ送電が始まっているので”あのお宅には電燈がありますのよ””まあ、すてき”てな感じですか。しかし所詮マロクールは田舎ですからね。ああいう感じかも。

【でんぽう】 電報  [英]telegram [仏]télégramme

(ア) フィルデス神父からの手紙の内容が大雑把すぎたのに業を煮やしたビルフランは、ダッカに直接電報を送ってエドモンの消息の詳細を知ろうとします。この電文を知ろうと焦ったタルエルオーレリィペリーヌ)をすっ転ばせたことから、ペリーヌはビルフラン邸に住まうことになるのですから、世の中わからないものです。
 電報料金は、英語で45語の電文が72フラン。1フラン5000円とすると36万円ほどもします。タルエルが”こんな大金を使うからには何かわかったんだろう”と思ったのも無理ありません。

(原) 原作では返信料32フランもあわせて払っています。さすがは御大、太っ腹ですね。
 ところで、アニメの設定と原作との間には20年ほどの時間差がありますが(アニメの設定のほうが古い)、いずれにしても無線通信の実用化前なので(無線の父として有名なマルコーニの実験成功は、原作発表の翌年の1894年。ちなみに電話はさらに後の発明。)、この電報は有線電信電報ということになります。電報が商業化された1840年代から約50年(または30年)で、フランスからインドまでずらーっと電信柱が連なったということになりますね。なんかスゴイ。
(2010.10.12)

【といれ】 トイレ  [英]toilet [仏]toiletteおまるだとそれぞれbedpanbassin

(ア、原) 無敵の名劇ヒロインといえども”大自然の呼び声”にはかないません。の畔のペリーヌはどのように用を足していたのでしょうか?マロクールへの道中ならともかく、何ヶ月かの定住を考えると”森の茂みでどんじゃらほい”ではすぐ限界が来てしまいます。抜かりのないペリーヌのことですから快適なトイレを用意したと思われます。
 1.厠 もともと川の傍にある家では、川にそのまま流す(落とす)構造にしたので”かわや”と言ったとか言わないとか。汚物が流れていってしまうので清潔です。狩猟小屋は水辺にありますからもってこいですね。小屋の裏側に茂みでもあれば足場を作って完成です。問題は水流がどの程度あるかです。よどんでいると悲惨なことに(あなおそろしや)。
 2.おまる 当時の市民生活ではおまるは普通のことでした。都市生活者はおまるの中身を平気で通りに捨てていたといいます(ああ、文化的生活)。それはともかく、長い時間待機していなければならない狩猟小屋にはおまる持参だったのかもしれません。獲物を警戒させないために、出入りは極力避けなければならないでしょうし。仮に例によって自作したとしても、おまるに出来る容器はと同様に入手出来たでしょう。おまるを使えばおしり丸出しのところを誰かに目撃される恐れもありません。ただし、ビルフランの感激度は低いと思われます(そんなことまで聞くかい、じじい!)。

 では、マロクールに辿り着くまではどのようにして用を足していたのでしょうか?まず馬車の旅では基本的におまるを使ったのだろうと想像します。これは利便性と安全性を考慮してのことです。ただでさえ不安な女二人旅。治安状態も今以下なのは間違いないので、極力一人になるのは避けたかったはずだし、迂闊なところで用を足してしまい迫害的な扱いを受けてしまうのは避けたかったはずだろうからです。家馬車があるので、夜間とか悪天候のときでも安心して用が足せるのもポイント高いです。
 そんじゃあ外で用を足すことはなかったのかと言えば、そうでもないでしょう。街中以外の街道沿いではほとんど民家はなかったし、おまるの内容物を捨てに来たついでに...ということもあったでしょうからね。信長に関する記録を残したことで有名なルイス・フロイスは次のような記述も残しているとか。『私たちは座ってするが、日本人はしゃがんでする』わざわざこんなことを書いたのは当時のヨーロッパ人がしゃがんで用を足すことがあまりなかったからではないかと思います。もちろんペリーヌはフロイスから300年後の人ですが、そういう傾向があったと言えるのでは?
 「じゃ、どうしたの?」
 アニメのペリーヌの下履きは股が縫い合わせてなかったと思われます。したがってやや足を広げておしりを突き出せば、そのまま用が足せたはずです。うまく裾をさばけば、おしりを丸出しにしなくても、服を汚さずに出来たのではないかと思います。たぶんペリーヌは神の如き快便だったでしょうから(環境の厳しい生活では快食快眠快便は必須です)、あっという間に終わったのではないかと。

 んでその後の処理ですが(まだ続けるのか、この糞野郎)、当時ヨーロッパにはようやく紙で拭く習慣が浸透していたようです。しかしそれ用の紙は硬いゴワゴワのものでよーくほぐして使っていたのでしょうね。しかし貧乏生活だった母娘にはそのような”贅沢”は許されるはずもなく、ぼろ布とか藁とかを使っていたのかも知れません。マリさんがヒンドゥーな人なら左手と水を使って洗ったのでしょうけど。実はこの方法が最も汚れが落ちてしかもおしりに優しい方法なのだそうです。今でいうウォシュレットですね。でもマリさんにそういうタブー(左手を食事に使わないとか)を示す描写があったような記憶はないですし。ちなみに乾燥した気候の地域では何もしなくても平気なのだそうですが、さすがにそれは....「ここはフランスよ。砂漠の真ん中の国ではないわ」
(2003.11.9)

【とらぶにく】 トラブニク  [波斯]Dranz? Drantsa?

(ア、原) サラエヴォから北西に約70km、ボスニアのほぼ中央にある町。エドモンはまずこの町を目指していましたが、その手前の村で肺病で倒れてしまいます。
 この町を目指したということは最短距離でトリエステに行こうとしたんでしょうか?それはあんまり無謀ですよ、お父さん!
(2010.10.17)

【どらんつ】 ドランツ  [波斯]Travnik Drantsa?

(ア) 早春のボスニア。雨中も旅を急ぐペリーヌマリでしたが、ぬかるみに車輪をとられて家馬車が立ち往生してしまいました。脱出を諦め掛けていたところに通りかかったのがドランツ。近郷一の力持ちで、家馬車を救い出してくれた上に、その夜の宿に庭先と納屋を貸してくれた優しい木こり(?)。3年前に妻を亡くしていますが、三人の子供たちと共に慎ましいがあたたかい生活をおくっています。その様子を垣間見たペリーヌは、家があるのはいいな、家族があるのはすばらしいと思うのでした。

【とろっこおし】 トロッコ押し  [英]waggon carrier [仏]porteur de wagonnetsダイジェスト版ではwagonnetsだけ

(ア,原) マロクール工場で働くことになったオーレリィペリーヌ)の最初の仕事。紡績工場で働いた経験のない人(タルエル曰く「何もできない奴」)が最初にあてられる職種。紡がれた糸を巻き取った軸をトロッコに入れて織り工場に運びます。単純だがなかなかの重筋労働。さすがのペリーヌも最初はかなり疲れたようですが、すぐに慣れて、DVDのパッケージにも描かれているような、勢いをつけたトロッコに飛び乗って髪をなびかせて進む姿が見られました。

 関係ないですが、高校の時の世界史の教科書に”産業革命当時では小さい坑道でも入れる子供が過酷な労働を強いられていた”として狭い炭坑(?)でトロッコを賢明に押す子供たちの銅版画風挿し絵がありました、そういえば。産業革命によって、それまでの屈強な男性から、柔軟で素早く器用な女性や子供の労働需要が増えて、新しい悲劇も増えたようです。

【どろわーず】 ドロワーズ  [英]drawers [仏]tiroirsただしこれはdrawersのもう一つの意味”引き出し”の仏訳。本当はpantalettes?

doro_3_50(ア,原) プロ野球のチーム名ではなくて、ペリーヌを初めとする名劇ヒロインたちが、下穿きとして着用していたであろう下着。(日本語ではナマってズロースになったって書いてあったんですけど、本当に?似たようなものに"bloomers"てのがあるんですけど、どう違うんスか?)だいたい膝丈ぐらいの股引状の下着です。裾の閉じたキュロットスカートというか。しかーし!このドロワーズって、股間が閉じてない!とゆーかスリットがあるだけなんですけど(滝汗)   どうやらこのドロワーズ、古い時代になるとほとんどか”股無し”(オープン・クロッチ)だったようです。で、時代が下ると閉じてくると。つ、つまーり!...原作よりは2,30年設定が古いペリーヌ@アニメのド、ドロワーズは...(ドキドキドキドキ)
 き、気を静めて...19世紀末の普通の西欧女性はおよそ次のような順に服を着てました。
 1.ドロワーズ この時代、すでにゴムが一般的に使われだしていましたが、まだ下着にまでは使われてはいなかったようです。紐かボタン、爪で留めていました。
 2.シミーズ ここまでが下着というか肌着。古くは製、時代が下ってからはキャラコやモスリンなどの綿の生地でした。
 3.コルセット 腰を締め付けるために鯨の骨などのばねが入った装具。昔の絵などを見るとすんごい広がったスカートなどを履いてますが、腰をさらに細くしてコントラストを付けるために装着しました。これを付けるようになったらお姉さん、みたいな。若草のメグはたぶんつけてたでしょう。きりきりっと(そんなシーンがあったかどうかは知りませんが)。しかし後の時代になると女性を束縛する象徴となったりもします。だからひょっとするとジョオはつけてなかったのかも。コルセットにはコルセット・カバーがつくのが普通です。
 4.クリノリン 広がったスカートは自身では形を維持できません。で、支えているのがクリノリンと呼ばれた、まあ傘のホネのようなものが入ったペティコートでした。古い時代ではフープ(パニエ)と呼ばれたものをつけてました。
 5.ペチコート コルセットとクリノリンの間やその上には何枚かのペティコートを重ね着してました。
 6.この上にスカートなどの上着を着たわけです。
我らのペリーヌの衣装は、残念ながら彼女は庶民も庶民、野垂れ死に寸前の階層でしたから1.2から間を飛ばして6でした。
 
 ちなみに西部劇などでガンマンがステテコみたいな下着を着ているのを見ることがありますが、あれもドロワーズと呼ぶのだそうです。
(2003.8.23)

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【ないふ】 ナイフ  [英]knife [仏]couteau

(ア、原) ペリーヌに残された数少ない財産のひとつ。アニメでは折り畳み式ですが原作では不明。ペリーヌはこのナイフでパンを切り、布を裁ち、木を削りました。切れ味が鈍ると、平らな石で研いでいましたね。手慣れたものです(しかし、ポールは切れ味に少々驚き過ぎ)。

 TV見てるとヨーロッパの人が鍋の上で小さなナイフでタマネギなんかをチャッチャッチャと切って入れたりなんかしてたりします。まな板を使わないんです。ものの本によれば、まな板を使うのは箸を使う日本、韓国、中国などのような中華文化圏だけなんだとか。ペリーヌが調理でナイフを使うシーンは無かったような気がするのですが、あるとすれば鍋の上でナイフをふるう、てなことになるのでしょうね。刃を手前にして使うので、なんかおっかないです。
(2002.9.7)

【なべ】 鍋  [英]pot [仏]pot深鍋

(ア) 狩猟小屋に帰る途中で、どこかのおばさんが金物を捨てようとしているのを見かけたオーレリィペリーヌ)は、その中にちょうど良い大きさの缶があるのに気付きました。訝しがるおばさんにその缶を譲ってもらったDIY少女ペリーヌは、取っ手をつけて小さな鍋を作ってしまいました。

 ちなみに缶詰が発明されたのは1810年で、缶切りが発明されたのはその50年後だとか。それまでは缶を開けるときは、文字通りかんを叩き壊していたらしいです。ぐちゃ。

(原) を口にすることができたペリーヌは、パンだけの食生活に飽き足らなくなってしまいました。通勤中に、引っ越しした家族が捨てていったがらくたの中から様々の大きさの缶を見つけた彼女は、もちろんそれを逃しませんでした。それらをいったん隠して帰りにGET!狩猟小屋へと続く伐採林を抜ける道端で(!)手頃な石を道具に板金加工。鍋もスプーンも作り上げてしまいました。しかし、当時は空き缶でさえ落ち葉で隠しておかないと持って行かれるような世知辛い世情だったのでしょうか?

 煙をあやしまれるおそれがあるので、島では火を使うことはできません。ペリーヌは伐採林の道端で煮炊きをすることにしました。ここなら”村を通る流浪者たちが野宿しているから”誰の注意も引かないと思ったからです。って、ちょいと娘さん。すごく不用心でないですかい!?

【にくや】 肉屋  [英]butcher [仏]boucherie

(ア) ラ・シャペル駅近くの肉屋のおやじ。バロンの芸に感心して、気前よくソーセージを次々とくれました。喜ぶバロン。もりあがるギャラリーの人々。だたひとり、飼い主のペリーヌだけは苦々しく情けない思いをしていたのでした。

【にじ】 虹  [英]rainbow [仏]arc-en-ciel

(ア) パリからマロクールへの旅の途中、暑さの中で疲労と渇きを堪えて歩くペリーヌは、とうとう気を失って倒れてしまいます。しかし、運良く降り出した大粒の雨粒がペリーヌの命を繋いでくれたのです。一息ついたペリーヌは、そのとき雨上がりの空に美しい虹を見上げるのでした。雨に感激してバロンと共にはしゃぎ回るペリーヌは楽しそうですが、実はすごく悲惨な境遇。実際、次回では行き倒れ度98%だし。
 これは原作では後述の入浴シーン1に相当する場面ですね。いわゆるサービスカットってやつ?でも個人的に一番のサービスカットといえば第35話の「うふ」に尽きるに思うな(早起きは三文の得、ってやつね)。
(2002.9.2)

【にせがね】 贋金  [英]counterfeit money [仏]argent contrefacon

(ア) パリの郊外ラ・シャペルのパン屋のおかみマルガレータが、ペリーヌから5フラン銀貨を巻き上げるのに使った口実。当時は頻繁に贋金が出回ったのかも知れません。贋金を入手して警察に届け出ない者は、一晩牢に拘留されるらしい。

(原) 上に加えて、相当ぼろのペリーヌの身なりを見て、これならこの娘の言葉より自分の言葉を誰もが信用するだろう、とふんだのでしょう。おかみの読みは当たって、まんまと銀貨を手に入れます。しかし、彼女はおそるべきラ・ルクリの逆襲を知る由もなかったのでした。

【にゅうよくしーん】 入浴シーン  [英]scene of bathing [仏]scene de se baigner

(原) さあさ、みなさんお待ちかね!と言ったところですが、アニメにはそのようなシーンはありません。しかし、心配御無用。酸いも甘いも噛み分けた(?)マロ翁の原作には2箇所あります。

1.まずは、に追われて逃げ込んだ森の小屋で、土埃に紛れた身体を雨水で洗い清めました。おかげで、ペリーヌは母の死からこっち休めることが出来なかった心身をリフレッシュすることが出来たのです、空腹と靴ずれを除けば。(でこの時、髪を三つ編みにまとめています)

2.もう一箇所は、ビルフラン屋敷に移り住むことになって、最初の晩餐を控えたとき。ペリーヌは上等の石鹸を惜しげもなく使って、丹念に身仕舞いをしたのでした。もちろん、ビルフランを失望させないために。
(2002.9.3)

【のみみず】 飲み水  [英]drinkable water [仏]l'eau buvable

(ア、原) オーレリィペリーヌ)のの暮らしで最も不安に思うのは飲み水です。現在の感覚では、どんなにきれいでもの水を飲むのはちょっとアレです。その上、アニメでは一面に水草の浮いている水面にバロンが喜んで飛び込んでいましたが、あれを飲めとおっしゃるので?湿地帯の水ですよ。細菌だの、寄生虫だのがうようよいるに決まってますぜ、先生。しかし、作者マロはいう”きれいな川の流れをすくってがぶがぶ飲むことが出来るのを信じられないのは、安楽に生きている人だけである”と。ですが、お言葉ですが、池ですよ先生。勘弁して下さいよ。征露丸も無いんですぜ(泣)。

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